エレナ②
今話も読みにきてくださってありがとうございます。
もう9月も半ばですね。そろそろ涼しくなって欲しい。
相変わらず誤字脱字が多くてすいません、報告お待ちしております。
一迅社様より「地味な私が転生したら王太子妃の取り柄のない妹だったので、自立の為に頑張ります」の書籍化が決まりました。発行をお楽しみに。
カインさんとの魔法の練習を終えて、家路に着く。
この1週間、レオニス様がいないと夕飯を作る事にもやる気が出ない。
「レオニス様に会いたいな……」
知らず知らずのうちにそう呟いてハッとする。
レオニス様はお仕事で大変な思いをされているのにそんな我儘を言ってはいけない。
「よし、今日は食材を買ってちゃんとご飯を作ろう」
一人でもちゃんとご飯を食べないと。
私は食材を買おうと市場に向かった。
通りを歩いていると、何か揉めている女性と男性の声が聞こえた。
「人にぶつかって来ておいて、その態度は何だ!」
「何なのよ! そっちが避けなかったからでしょ!」
あれは、さっきの魔法師団員のエレナさんじゃないか。
こんな街中でトラブルなのか?
「あの……。どうかしましたか?」
揉めている男女に割って入ると、男性の方は肉屋のおじさんだった。
「ティナちゃんじゃないか!」
「あ、肉屋のおじさん。いつもありがとうございます」
「いやこっちこそ。買い物かい?」
「ええ。エレナさんが何か?」
私はエレナさんの二の腕を掴み、おじさんに向き直った。
「ティナちゃんの知り合いならもういいよ。こっちも避けられなかったのは悪かったし。ティナちゃん、また肉買いに来てくれよな」
「はい、また必ず行きますね」
肉屋のおじさんを見送ると周りに集まりだしていたギャラリーもバラバラと散っていった。
「エレナさん。行きましょう」
とりあえずここから離れようと私はエレナさんの腕を引いたが振り払われた。
「何よ、アンタ! 急に出てきて。私はアンタみたいな何もしなくても愛されてますって偽善者が一番嫌いなの。努力もしないで、ただただ笑ってれば皆が優しくしてくれると思ってるなら大間違いよ」
「エレナさん……」
「気安く呼ばないで」
そう言ってエレナさんはまたどこかに行ってしまった。
私は偽善者なのか。
また失うのが怖くて、失うくらいなら多くを望まないほうがいいと思ってきたのは間違っているんだろうか。
「ティナ」
すぐそばで私を呼ぶ声がした。
振り向くとそこにはルチアが立っていた。
「大丈夫。ティナは偽善者なんかじゃないよ。私は知ってるから」
ルチアはそう言ってくれたが、私の胸の奥には小さな棘が刺さってしまったのだった。
読んでいただきましてありがとうございました。
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