家政婦ということ
今話も読みにきてくださってありがとうございます。
昨日投稿しようと思っていたのに、朝時間がなくなってしまったので翌日になりました。お待たせしました。
相変わらず誤字脱字が多くてすいません、報告お待ちしております。
一迅社様より「地味な私が転生したら王太子妃の取り柄のない妹だったので、自立の為に頑張ります」の書籍化が決まりました。発行をお楽しみに。
最近、ノエルの機嫌が悪い。
原因は新しい団員のエレナさんとかいう女性らしい。
ノエルによると、エレナさんはブロンドに青い目の気の強そうな美女らしいが、どうやら色々問題があるようだ。
ノエルの訓練が休みの今日はうちに遊びに来ているのだが、さっきからエレナさんのことを話している。
「それもあの女、団長と副団長の前だとあからさまに態度が違うのよ」
「何ですって!それは聞き捨てならないわね」
今の台詞は私ではない。ルチアも来ているのだ。
「いるわよね〜。いい男の前だと猫被るやつ」
「そうそう。明らかに団長を狙ってるのが丸わかり」
え?レオニス様を?
思わず私の眉間に皺がよる。
「団長はうまくかわして、相手にしてないから大丈夫だよ。ティナ」
ノエルが私を見てニヤニヤする。
「わ、私は別に……。レオニス様の恋人でもないし」
「本当素直じゃない」
「本当ね」
素直じゃないというより、自分をわきまえているつもりだ。
レオニス様はこのアストリエ王国の魔法師団長なんだから。
「ところで、今日は団長はいないの?」
ノエルが尋ねる。
魔法師団は交代で休みを取るが、レオニス様も本当は今日は休日だったのだ。
しかし朝食を食べた後、王宮からの手紙が来て呼び出されてしまった。
そういうと二人は憐れむように頷いた。
「レオニス様もティナも大変だねー。今日はどんな無理難題をふっかけられてくるんだか」
「え?」
ルチアの言葉に嫌な予感がする。まさか、またレオニス様のお仕事が増えるのか。
「陛下、レオニス様や魔法師団に無茶振り容赦ないんだよなー。団長が帰ってきたら癒してあげて」
「それはそうだけど……」
ノエルの言葉に改めて、この国の国王にとってレオニス様がどれだけ信頼されているかわかる。
しかし、王様は魔法師団が国王直属なのをいいことに、急な仕事や大変な仕事を頼みすぎではないのか。
レオニス様だって人間だ。十分な休息が必要なのに。
「うん。家政婦としてしっかり栄養のある食事や良い睡眠ができるようサポートするよ」
意気込んでそうノエルにいうと、微妙な顔をされた。
「あー、そういう意味にとっちゃったか」
ルチアがノエルの肩に手をそっと置く。
「ノエル。私達もまだまだ後押しが足りないのかもね」
「そうだね。団長がヘタレなのも原因の一つかもしれないけどね」
レオニス様を悪くいうのは友人でも聞き捨てならない。
「レオニス様はヘタレなんかじゃないよ。前も敵のアジトにに先頭で向かっていったんだから」
私達を助けにきてくれた時のレオニス様はとてもかっこよかった。
「「は〜あ」」
そう言った私に向かって、二人は盛大なため息をついたのだった。
夕方。ノエルとルチアが帰ってから張り切って夕飯を作っていると、レオニス様が帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい、レオニス様」
レオニス様は上着も脱がずにソファに深く座り込んだ。
「お疲れ様ですね。何か飲み物でもお持ちしましょうか?」
レオニス様はひどく疲れた様子だ。
「ああ、何か冷たい飲み物を頼む」
私は冷蔵庫から果実のジュースを取り出してコップに注いだ。
「お待たせしました。どうぞ」
レオニス様は果実のジュースを一気に飲み干した。
よっぽど喉が渇いていたのかな。
「は〜。少し元気が出たよ。ありがとう、ティナ」
私は空になったコップを片付けながら聞いた。
「陛下のお呼び出しは大変なお仕事なのですか?」
レオニス様はソファに座った体制で、両手を合わせて顎を乗せると考えるようなポーズをとった。
「ああ。機密事項なんで言えないんだが、とても厄介だ」
「そんな! 危険なお仕事なのですね」
今度も悪事を働く輩か。まさか高ランクの魔獣討伐だったらどうしよう。
「いや、そうではないんだ。危険はあるにはあるが、そんな大したものではない」
そうなの?
「うーん、機密事項で言えないのがもどかしいんだが……」
私ってばレオニス様を困らせてる?
「レオニス様。レオニス様に危険が少ないなら大丈夫です。主人のお仕事内容に口を挟むなんて家政婦としてあるまじき行為でした。申し訳ありません」
一歩下がって四十五度のお辞儀をする。
「いや、今回は機密事項だが、ティナなら気にせず聞いてきていいんだぞ」
レオニス様はいつでもお優しい。
「大丈夫です。私はお夕飯の準備に戻りますのでよければ先にお風呂へどうぞ」
「そうか? ではさっぱりしてこよう」
そう言ってレオニス様は浴室に行った。
私は知らなかった。あの時、もっと詳しくお話を聞いておけばよかったと後に後悔することになるなんて。
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