ルチア
今話も読みにきてくださってありがとうございます。
相変わらず誤字脱字が多くてすいません、報告お待ちしております。
毎日暑い日が続きますが、夏バテしてませんか?
一迅社様より「地味な私が転生したら王太子妃の取り柄のない妹だったので、自立の為に頑張ります」の書籍化が決まりました。発行をお楽しみに。
レオニス様の所にやってきてもうすぐ一年が経とうとしていた。
あれからもレオニス様に魔力を流してもらっている。
しかし、最初に倒れてしまったこともあり、少しずつだ。
それでも私の使える魔力は確実に増えてきている。
最近では時々レオニス様のお仕事が早く終わった時や、お休みの時、お庭で少し水魔法を教えてもらっている。
とは言っても、まだウォーターボールが的に当たるようになってきた程度だが。
しかし私はあくまでも家政婦、実践をする機会は来ないと信じている。
今日は街に買い出しに行く日だ。
レオニス様の家の冷蔵庫は優秀だし、魔法鞄もある私は、頻繁に買い出しに行く必要はない。
しかし、それでは家政婦としてあまりにも楽をしすぎなんじゃいかという不安にかられるのだ。
そんなわけで、今のところ二、三日に一回は食材の買い出しに市場に出ている。
市場の人達ともかなり仲良くなってきたと思う。
特にパン屋の娘であるルチアとはとても仲良くなった。
ルチアは人懐っこく、若い少女らしく可愛い流行りのものが大好きだ。
歳が同じこともあり、休みの日にはよく一緒に出掛けている。
ルチアはオシャレにも敏感で、自慢のストロベリーブロンドの髪のお手入れには手を抜かない。
仲良くなったきっかけも、私がルチアの髪を褒めた事だ。
今日もルチアの店番時間にパン屋に行っておしゃべりする。
「ティナは可愛いんだからもっと服装に気を遣った方がいいよ」
「うーん。そうなんだけどなんかレオニス様にもらったお金を自分の洋服とかに使うのは無駄遣いな気がして……」
「何言ってんのよ。ちゃんとお給金としてもらってるんだから、ティナの自由に使っていいでしょ」
「レオニス様も欲しいものがあったら遠慮せず買うように言ってくださるんだけど。あまり服やお化粧品に興味がなくて……」
それを聞いてルチアはため息をついた。
「はーあ。化粧もなんもしてなくて、服もローテーション。そんでこんだけ可愛いって、どんだけ素材がいいのよ。私なんか、どんだけお金かけて盛ってると思ってるの?」
「ルチアは何もしなくても可愛いけど、努力してもっと可愛くなったんだからすごいよ」
ルチアはプロポーションも抜群だ。
「そうよ!私は努力してるの。大好きなスイーツも月に一度って決めてるんだから。私って太りやすいから……」
「ルチア、えらい」
ルチアは嬉しそうだ。可愛い。
「話が逸れたわね……。何が言いたいかと言うと、ティナももっとオシャレを楽しむべきだって事。もっと可愛くした方がティナの好きな人も喜ぶんじゃない?」
私は思わずレオニス様の優しい瞳を思い出す。
レオニス様ならきっと可愛いと褒めてくれるだろう。
ハッとルチアを見るとニヤニヤとこちらを見ている。
「好きな人なんていないわ」
家政婦の分際でレオニス様を好きだなんて言えるわけがない。
「こんなにわかりやすいのになぁ。」
ルチアがため息をつく。
「なになに、何の話?」
いきなり男性の声がしてびっくりして振り向くと、そこにはカインさんがいた。
「キャア!カイン様!……いらっしゃいませ」
「ティナちゃんもルチアちゃんも今日もかわいいね。で、なんの話してたの?」
慌ててなんでもないと私が言うと、ルチアが私の前に乗り出して言った。
「ティナはもっと自分の為にお金を使うべきだって言ってたんです。服とか化粧品とか、ヘアケアとか。その方がティナの好きな人も喜ぶんじゃないかって」
「そ、そんな人いませんから!」
私は必死に否定する。カインさんに知られたらレオニス様にも知られてしまうかもしれない。そうなったら家政婦として失格だ。レオニス様の迷惑にだけはなりたくない。
「そうなんだ。好きな人はいないんだ」
カインさんは微妙な表情だ。
「まあ、それは置いといて。ティナちゃんが可愛く着飾ったりする事は団長も喜ぶと思うけどな」
以前ノエルにも同じような事を言われたが、それはレオニス様に甘える事にならないだろうか。
「それはそうかもしれませんが……」
私が煮え切らないでいると、ルチアがカインさんをちょっといいですかと手招きして私から離れた所に二人でしゃがみ込んだ。
何してるんだ。
コソコソと話す二人は私の視界に入っているが、話している内容まではわからない。
「うん、いいね。その手でいこう。じゃあまたね。ティナちゃんもまたね」
カインさんは一人で納得して帰って行った。
「ルチア、カインさんと何を話してたの?」
私が聞くとルチアは私に向かってウインクをした。
「きっとすぐにわかるよ」
数日後……。レオニス様が家に帰るなり魔法鞄から大きな箱や小さな箱、たくさんの紙袋を取り出した。
「レオニス様!これは一体何なんですか?」
驚く私にレオニス様が照れくさそうに笑った。
「俺がティナに着て欲しいと思った服や靴なんかだよ」
「どういう事ですか?」
いきなりで話が見えない。
「カインにティナが欲しいものを全然言わないと相談した事があってな。そうしたらこの前、カインが俺に言ったんだ。ティナが好きそうなものを俺が買ってプレゼントしたらいいって」
待って、もしかしてこの前パン屋で話してた……。
「そうしたら、ティナの友達のルチアという子を紹介してくれてな。カインと一緒にパン屋までティナの好きそうなものを教えてもらいに行ったんだ」
絶対そうだ。
「ルチアについてきてもらって、ティナに似合いそうな服や靴、化粧品なんかを買ってきたんだ。ほら…、あれだ、ティナも十六歳になったしそろそろおしゃれもしたいだろう。どうかもらってくれないか」
レオニス様にプレゼントされれば受け取らないわけにはいかない。
「レオニス様、お忙しいのに私のためにわざわざありがとうございます。ありがたく着させてもらいますね」
レオニス様はホッとしたような笑顔で笑った。
「ああ、俺もティナが着てくれると嬉しい」
ああ、もう。この人は本当に。好きにさせないで欲しいのに……。
後日ルチアから聞いた話によると、先日カインさんにこっそり言ってたのはレオニス様からプレゼントして欲しいという事だった。
ルチアはレオニス様のプレゼントならティナも受け取るだろうと言ったのだ。
カインさんもレオニス様から相談されていたこともありさっそく実行に移してくれたそうだ。
ただレオニス様もカイン様も私が好きそうな服がわからず、ルチアに聞きにパン屋に来たそうだ。
「それで私が、良かったらティナに贈るものを一緒に選びましょうかって言ったのよ」
ルチアはセンスがいいから選んでくれたものはどれも私好みの素敵なものばかりだった。
「私も役得だったわ。魔法師団長のレオニス様と副団長のカイン様のイケメン二人と街を歩けるなんて。一生の思い出だわ」
「そんな大袈裟な……」
でもルチアも楽しんで選んでくれたようで良かった。
今日も早速、贈っていただいた洋服を着ている。
「レオニス様が心配にならないように、これからは時々お給料で服を買うようにするわ」
私が言うと、ルチアは微妙な顔をした。
「うーん、男心がまだまだわかってないね。でも私が言うのも野暮だよね」
ルチアは窓の外を見つめた。
読んでいただきましてありがとうございました。
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