メリンダ
今話も読みにきてくださってありがとうございます。
昨日に引き続きの投稿です。
相変わらず誤字脱字が多くてすいません、報告お待ちしております。
一迅社様より「地味な私が転生したら王太子妃の取り柄のない妹だったので、自立の為に頑張ります」の書籍化が決まりました。発行をお楽しみに。
その時、のんびりした女性の声がした。
「あらあらなんだか騒がしいわね」
「誰だ?お前?」
男の一人が問いかける。
「誰だっていいじゃない?それより私と遊ばない?」
女性はこの状況をわかって言っているのか。
「今、急いでるんだ。またな」
「でもよ〜、めちゃくちゃいい女だぜ」
「こんな女と遊べるなんて、そうそう無いぜ」
男達は私を入れて運んでいた袋を地面に置いたようだ。
「じゃあ、この荷物を置いたらすぐ戻ってくるから、少し待っててくれないか」
「その必要はないよ。バインド」
女性の声と、ワッと驚いている男達の声がした。
何がどうなっているのかさっぱりわからない。
「何?どうなったの?」
ゴソゴソと音がして、私を入れている麻袋が開き一気に明るくなった。
「アンタ、大丈夫かい?」
「は、はい。大丈夫です」
目の前に黒髪に紫の瞳の妖艶な美女が私を心配そうに見つめていた。
なんとか袋から這い出ると、男達が手足を光の輪で縛られて転がっていた。
「助けていただきありがとうございます」
男達は何か叫んでいるが、声が出ないようだ。
「ああ、うるさいから静かにしておいたのさ。この辺りはこういうのが多いから一人で立ち入っちゃいけないよ」
「はい、気をつけます」
「レオニス様って聞こえたけど、あの子の知り合いかい?」
「はい、レオニス様のところで家政婦をやっています」
「…アンタを危険な目に遭わせるなんて、あの子もまだまだだね」
あの子とは誰のことだろうか。
「まずこいつらを警備隊に運ばなきゃね」
女性がパチンと指を鳴らすと三人の男達が消えた。
「え?どこに?」
私がキョロキョロしてると、女性は私の手をとった。
「とりあえず、うちでお茶でも飲んできな」
またパチンと指がなって、瞬きをすると、そこは全く別の場所だった。
「ここは……?」
さっきまでいた路地から一転、私はどこかの家のキッチンに立っていた。
至る所に植物が置いてあり、乾燥したハーブが所狭しとかかっている。
「ここは私の家さ」
女性は優しく微笑んだ。
一体何が起こったのか分からず戸惑う私に、女性は椅子に座るよう促した。
「アンタ転移魔法は初めてかい?レオニスの知り合いだろう?」
転移魔法なんて噂でしか聞いたことがない。実際に自分が体験するなんて思っても見なかった。
「先ほどは助けてくださってありがとうございました。私はレオニス様の家政婦をしておりますティナと申します」
「そうかい、アンタがティナかい。私はメリンダ。レオニスの知り合いさ」
さすがレオニス様だ。転移魔法を使える、こんな綺麗な方と知り合いとは。
「酷い目にあったね。ハーブティーでも入れるから、ゆっくりしていきな」
「ありがとうございます」
ホッとすると同時に、さっきまで実感が湧かなかった攫われかけた恐怖が蘇って手が震えた。
もしこの女性が通り掛からなかったら、私は今頃どうなっていたのだろう。
「全く、あそこの治安の悪さには困ったもんだね。レオニスにはちゃんと伝えておいたからゆっくりしていくといい」
メリンダさんはそういうと、魔法でお湯を沸かしポットに注いだ。
ハーブのいい香りが部屋に広がる。
メリンダさんはハーブティーの入ったティーカップを私の前にそっと差し出して、自身も向かいに座った。
「熱いから気をつけて飲みな」
「ありがとうございます。いい香りですね」
ハーブの香りが心を落ち着けてくれる。
こくりと一口飲むと、ほんのり優しい甘さも感じられる。
「あ、美味しい」
メリンダさんも私の向かいでお茶を飲む。
なんだろう、この空間はとても落ち着く。
「夕食も食べてゆっくりしていきな。帰りもちゃんと送ってあげるから」
「あ、でもレオニス様の夕食が……」
夕食の食材を買いに行っていたんだった。
「あの子なら大丈夫。今までも一人でやっていたんだ。気にすることはない」
あの子ってひょっとしてレオニス様?一体メリンダさんは何者なんだろう。
しかしここがどこかも分からず、帰るすべもない私は、しっかり美味しい夕食までいただき、レオニス様の家の前まで送っていただいた。
「今日は本当にありがとうございました。どうぞ寄っていってください」
私の家ではないが、レオニス様の知り合いだしいいだろう。
「いや、今日はやめとこう。あの子に会うとティナの前で叱ってしまいそうだしね」
そんな子供に対するみたいに……。
じゃあまた、近いうちにと言ってメリンダさんはまた転移して行った。
読んでいただきましてありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
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