ビーフシチュー
今話も読みにきてくださってありがとうございます。
相変わらず誤字脱字が多くてすいません、報告お待ちしております。
一迅社様より「地味な私が転生したら王太子妃の取り柄のない妹だったので、自立の為に頑張ります」の書籍化が決まりました。発刊をお楽しみに。
ダニエルさんの雑貨屋を後にして市場に向かうと、市場は沢山の人で賑わっていた。
「いらっしゃい!新鮮で安いよ!」
元気な声があちこちで飛び交っている。
「すごい……広い」
市場の大きさに驚いて立ち尽くしていると、近くから声をかけられた。
「お嬢ちゃん、何買うんだい?」
近くの八百屋のおばさんが声をかけてくれる。
「ええと、野菜と肉を」
おばさんは胸を張って答えた。
「野菜はもちろんウチが一番安くて新鮮さ。良ければみていっておくれ。ちなみに肉はその斜め前の店がいいよ」
「ありがとうございます。それじゃあ、このキャベツとにんじん1つずつと……トマトと……」
本当に新鮮で美味しそうな野菜だ。
「お嬢ちゃん、あんまり見ない顔だけど最近きたのかい?」
「はい、この前王都に来ました」
「じゃあ、このリンゴをおまけしてあげるよ。ようこそ、王都へ」
にこにこ気のいいおばさんだ。
その後行った肉屋のご主人もいい人だしいい街だと思っていたら、肉屋のご主人が言った。
「お嬢ちゃんまだ王都になれてないみたいだけど、あの奥のあたりは治安が悪いから立ち入らないようにな」
「そうなんですか?」
王都は煌びやかなだけではないのだな。
「ああ、お嬢ちゃんみたいなかわいい子が一人で歩いてたら攫われてしまうよ。くれぐれも気をつけなさい」
「はい、わかりました。ご親切にありがとうございます」
受け取ったお肉を鞄にしまい、私は家路についた。
家に帰ってさっそく夕飯の仕込みにかかる。
今日の夕飯はビーフシチューだ。
たっぷりのお肉を赤ワインで煮込む、お母さんの得意料理だ。
父と共に仕事で忙しくしていた母だが、私の誕生日など特別な日によく作ってくれた。
旅の途中の大体どこかの貸し家だったり、野営だったが、あの味は忘れられない。
私の水魔法も野外では役に立っていたな。
攻撃は大したことがなくてもこういった料理や洗い物、洗濯には便利な魔法だ。
まず牛肉を大きめに切って塩コショウを振り、先に鍋で表面を焼いておこう。
一旦取り出してスライスした玉ねぎをしっかり炒め、小麦をを振りいれる。
ニンニク、カットしたトマト、さっき焼いた牛肉、ワインやハーブ、さらに水魔法で水を入れてコトコト煮込むのだ。
「おいしくなーれ。おいしくなーれ」
お母さんとそう言いながら木べらでかき混ぜていたことを思い出す。
お父さんが、『いい匂いだな、今日はもしかしてビーフシチューか』と嬉しそうに近づいてきたこともまた思い出す。
料理の味や匂いは記憶を呼び起こすと言っていたのはお父さんだっただろうか。
幸せな思い出を大事にしていきたい。
私はお父さんが残してくれたネックレスにそっと触れた。
「思い出の品は全てなくなったと思ってたのに…」
天国からこんな嬉しい贈り物をもらえたことに感謝だ。大切にしなければ。
「いい匂いだな」
気づくとキッチンの入り口にレオニス様が立っていた。
お父さんと全く同じように……。
私は振り向いて思わず少し笑ってしまった。
「レオニス様、おかえりなさい。今日はビーフシチューなんですよ」
「ビーフシチューが作れるのか? すごいなティナ」
「今日はいいことがあったので特別なんです。すいませんが、もう少しお待ちいただけますか?」
「ああ、先に風呂に入ってこよう」
レオニス様はお風呂場に行ったようだ。
味見をして調味料を足して仕上げだ。
「うん、美味しい」
新鮮な野菜で作ったサラダも美味しそうだ。
レオニス様が髪をタオルで拭きながらお風呂から出てきた。
「このタオルもふかふかだな。洗ってくれたのか」
「はい。と言っても魔道具が自動で洗ってくれたので、私は干しただけですが」
「干すのだって大変な仕事だ。ありがとう」
そんなことでお礼を言われるのはなんだかむず痒い。
「お待たせしました。夕食ができましたよ」
テーブルにパンとサラダを並べて、ビーフシチューをたっぷり入れたシチュー皿をダイニングの椅子に座ったレオニス様の前に置く。
私も自分の分を用意して向かいに座った。
「では、いただこう」
レオニス様はビーフシチューをひと匙すくうと口に入れた。
「うん、うまい」
思わず顔が綻ぶ。
自分が作ったものをレオニス様が美味しそうに食べてくれるのが嬉しい。
「ティナは食べないのか?」
「食べます!」
レオニス様に見惚れていたなんて恥ずかしい。
「ティナは今日は何をしていたんだ?何か困ったことやは不自由はしてないか?」
食べながら今日あったネックレスのことを話す。
「それは不思議な縁だな。ティナのご両親が巡り合わせてくれたに違いない。そのネックレスは大切にしないとな」
「はい!大切にします」
「……ところで、ビーフシチューはおかわりしてもいいか?」
いつの間にかレオニス様のお皿は空になっていた。
「はい、たくさんありますのでどんどんおかわりしてくださいね」
結局レオニス様はその後三杯もおかわりをした。
読んでいただきましてありがとうございました。
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