表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
985/1001

総力戦

 俺の気合に呼応するように、アデライト先生が頭上を飛び越えていく。


「みなさん! 再生される前に叩きます!」


 飛翔の最中に大きく杖を振るう。


「カオス・フラグメント――フレイムボルト・レーヴァテイン!」


 顕現するは濁った紫炎の豪剣。根源粒子を纏った最上級の戦闘魔法が、漆黒の虚空を切り裂いて迸る。

 爆ぜるように燃え盛る紫炎に追随して、アイリスとアカネが【ゾハル】へと吶喊していく。


「二度目じゃ。よもやヘマはせんじゃろう」


「もちろんですわ。お任せあれ」


 元通りになろうとする【ゾハル】の隙間を、紫に煌めく大火が埋め尽くす。混沌粒子を纏った炎は、確実に【ゾハル】の自己再生を阻害していた。

 出来た隙は大きい。四つの破片のうちの一つに、アカネとアイリスが取りついた。

 二人の拳足が怒涛の如き打撃を放ち、削岩機のように【ゾハル】を削り、砕き割っていく。


「サラ! ウチらも負けてられないっすよ!」


「うん。ボクの魔力、ぜんぶ使って」


「おーけーっす!」


 ウィッキー、サラ姉妹が手を取り合い、互いの魔力を練り合わせていく。二人の羽織るマントが大きくはためいた。

 強大な戦闘魔法の兆しが、核心部全体に波及しているのがわかる。

 サラの有するドルイドの魔力。それはファルトゥールの神性の顕れだ。ウィッキーの精密すぎる魔力操作によって、神を殺し世界を歪める一撃にもなる。

 サラの全身から迸る琥珀の波動が、ウィッキーの描いた魔法陣へと集束していく。

 その超越的な威力を物語るように、サラの表情が次第に険しくなる。

 ウィッキーの額から汗が流れ、白い頬を伝って落ちた。


「おねぇちゃん! これで……全部だよっ!」


「よく頑張ったっすね、サラ」


 ウィッキーの手が、銃の形を真似て、破片の一つを指した。


「外しはしないっす……!」


 マルデヒット族の姉妹によるシナジー。

 極めて短く、甲高い射出音。

 二人の前に浮かぶ魔法陣から、極限まで圧縮された魔力の砲弾が撃ち出された。


 見ただけでわかる。ヤバいやつだ。

 放物線を描いて飛翔した琥珀の砲弾は、音もなく着弾。その地点から空間を歪め、【ゾハル】の破片を捻じ曲げていく。

 すげぇ。


(こんな……こんなこと、認めない……! 認めてたまるものですか!)


 エマの叫びが世界に反響する。


(このっ……!)


 四つのうち損傷の少ない二つの大破片が、突如として金色の光を放つ。

 そのエネルギーにアカネとアイリスは弾き飛ばされ、ウィッキーとサラの魔法も無効化されてしまう。


「まじか……!」


 こちらに吹き飛ばさてきたれアイリスを辛くも受け止める。

 息はあるものの、ダメージは相当なものだった。


「マスター……攻撃の手を、緩めては……」


「わかってる。けどお前が」


「わたくしなら……大丈夫、ですわ」


 そう言ってにこりと微笑むアイリス。だが、身体には微塵も力が入っていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ