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突入の鬨

「えっ」


 俺は驚いていた。

 みんな驚いていた。

 まさかこんな事が起きるとは思ってもみなかった。


「おいおい……」


 ぶっとい杭で胴体を貫かれたムーディたんは、苦痛というより悲しげな表情でにゃーと一鳴きした。


「よし、っす」


 ウィッキーが頷くと、魔法の杭は砕けるような音を残して消え去った。

 ムーディたんの腹と背中に空いた穴から、真っ黒な邪気が噴出する。


「さぁ。いくっすよ」


 オルタンシアの顔がこわばった。

 ウィッキーの制御によって、溢れ出た邪気がオルタンシアの周囲に引き寄せられ、ゆっくりと渦を巻く。

 異様な光景だ。粒子にも近い暗黒の波動が、竜巻のようにぐるぐると回っている。


 あいかわらず邪悪な雰囲気だが、凄まじいエネルギーを内包していることは俺にもよく感じ取れた。

 世界を侵食する力。確かにこれなら、裏世界に穴を空けて核心部に至る道を作れそうだ。


「……お願いします」


 意を決し、オルタンシアが胸に手を当てた。

 次の瞬間。

 オルタンシアの周囲にあった邪気が、光を放つ。

 黄金色の眩い輝きだ。

 邪悪なオーラは一転して、神々しく温かな灯りに変わった。


「これは……オーラの性質が反転している……!」


 驚いているのは原初の女神だ。


「【君主】でもない者が、これほどまでに根源粒子を自在に操るなんて」


 ふっ。

 どうだ。俺のウィッキーはすごいだろ。

 えっへん。

 だが、すごいのはウィッキーだけじゃないぞ。


「オルタンシア! このままスキルを使うっす! いつも通りに!」


 オルタンシアは首肯で答え、手を掲げる。その先に集まっていく光の粒子。

 エマの後ろにある巨大な岩の上に、指向性をもってふわふわと移動している。

 そして。


「ゲート……開きます……!」


 大岩の上に集まった光のオーラが、真円を形成して一層の輝きを放つ。

 直後、円の内側に深淵じみた闇が顔を覗かせる。


「開いたっす! 核心部の扉!」


 ウィッキーが叫んだのと同時に、駆け出したのはアカネとアデライト先生だった。


「飛び込むのじゃ! 遅れるな!」


「ゲートが閉じる前に! 急いでください!」


 言いながら二人はゲートへと跳躍。その中に飛び込み、姿を消した。

 すごい。一切の躊躇がない。

 と、感心している場合じゃない。


「行くぞ! 俺達も! 全員突っ込め!」


 あんなところに飛び込んで大丈夫なのか、というみんなの逡巡を排し、鼓舞するために、俺はあえて気勢をあげて駆け出した。

 後ろに追随する仲間の声と気配を感じつつ、俺は非常に格好いいポーズでジャンプ。


「うおおおおおお!」


 そのままオルタンシアが開いたゲートの中に突入した。

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