まもなく核心部へ
「エマくん……!」
駆け寄ろうとしたヒーモを、アデライト先生が制す。
「彼女は今、自身の中の神と向き合っています。下手に刺激してはいけません」
エマは精神を統一し、自らの思念を核心部に送っている。そういうことだろう。
「神と人との心の対峙じゃ。神となるために人としての自己を切り離したツケが回ってきておる」
同じ生命が持つ神の一面と、人の一面。一体どんなことになっているんだろうな。
「しかし先生。エマくんはなぜ、女神と対話する決断ができたのでしょうか。こう言ってはなんですが、彼女はそれほど好奇心豊かな性分ではなかった」
「エマ・テオドアという女の子はそうなのでしょう。ですが、彼女は紛れもなくエレノアちゃん自身です。秘めたる本質は同じ。私の知っている彼女は、自分が何者なのかを知りながら、真相から目を背けるような子じゃありませんでした」
「たしかに」
俺もそれには同意だ。
「エレノアはまっすぐな奴だ。まっすぐ過ぎて暴走しちまうくらいに」
アインアッカ村にいた時も、魔法学園にいた時も、戦争に駆り出された時も、聖女にまつり上げられた時も、あいつはずっと一生懸命だった。
俺に対する恋心ともなると、究極的な本気度だった。
世界がこんな状況になっているのは、エレノアが素直で正直すぎたからというのもあるだろう。
「もし自分が世界を創り変えてしまって、それを忘れてのうのうと日常を生きているなんて知ったら……あいつはその原因を探ろうとするに決まってる」
「なるほど。誰よりも彼女をよく知るキミが言うのなら、きっとそうなんだろうね」
ヒーモはどこかすっきりしたような面持ちで頷いた。
「いずれにせよ、やることは変わらんじゃろ。要らんことを気にするでない。相変わらず未熟な若様じゃ」
アカネのつっけんどんとした物言いに、ヒーモはやれやれと首を振った。
「お前もすっかりロートスに毒されてしまったようだね。以前は吾輩の従者に甘んじていたというのに」
「ダーメンズ家への義理を果たしておったまでじゃ。おぬしの先祖には随分と世話になったからのう」
そういえば、アカネは初代ダーメンズ子爵の養女だったんだっけか。
まさに人に歴史あり、だな。
「まぁ、ここは素直に年長者の言うことを聞くことにしよう」
ヒーモの言い方から察するに、アカネの正体と出自を知っているようだ。
こいつもいつの間にか、世界の真実の傍らに立っていたんだな。
「原初の女神さま。我々も核心部へ向かう準備をしましょう」
「ええ」
アデライト先生と原初の女神は、眠っているウィッキーをその場に横たえる。
穏やかな寝息を立てるウィッキーの柔らかな頬を、サラが指でつついた。
「むにゃ……」
「おねぇちゃん起きて。いつまで寝てるの」
「んー……あとごふん……」
わかる。
寝起きの五分ほど価値のある時間はないよな。
けれどのんびりしている暇はないんだ。
「ウィッキー。起きるんだ」
俺はウィッキーのたわわなおっぱいの、その頂きを指でさっとこすった。
「はわっ!」
びくっと身体を揺らし上体を起こすウィッキー。効果覿面だ。
「あれ……ここは……?」
キョロキョロして困惑している様子だ。無理もない。
とりあえず状況を説明をしないとな。




