表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
968/1001

残酷なる未来

「うわぁ」


 里はやばいことになっていた。

 瓦礫が爆撃のように飛来し、地面には巨大なクレーターがボコボコ生じている。

 家屋は見るも無残な姿になり果てており、世界樹の根も甚大なダメージを被っている。

 エルフの里はまさに壊滅状態だ。


「これで人的被害ゼロ? どうやったらそんなことが……いや、そもそもエマの奴はなんでエルフを守るようなことを……」


 エマが心優しい少女だということは理解しているが、それでも世界の敵となった〝ユグドラシル〟を構成するエルフを守るだろうか。

 彼女は一般的なデメテル人としての価値観を持っている。たとえ世界の真実を知ったとしても、急に価値観が変わるなんてことはないだろう。イキールがそうだったように。


「本人に聞けばわかることだよ。行こう」


 珍しくヒーモが真っ当なことを言う。

 記憶と力を取り戻したこいつは、成熟した男の風格をなしている。ヒーモのくせに生意気だな。なんとなく頼もしい。


「アナベル嬢。エマくんはどこにいる?」


「あそこです」


 アナベルが指したのは、世界樹の根元だ。木の股になっている付近だった。

 瓦礫がところどころに積み上がったせいでよく見えないが、あそこって確か。


「聖域か?」


「うん。みんなあそこに避難してる」


「行こう」


 俺は逸る気持ちを抑え、瓦礫の海を飛び越えながら進んだ。

 聖域の入り口付近にはエルフ達が集まり、人口密度の高い空間を形成していた。

 まさに避難所といった感じだ。


 千にも及ぼうかという人数から、特定の人物を見分けられることができたのは、一重にエルフが露出の激しい装いだったからだろう。

 エルフ達の間をせわしなく動き回るメイドの姿があった。


「ルーチェ!」


 俺は彼女の名を呼び、一足飛びに駆け寄る。


「え……? ロートスくんっ?」


 突然目の前に現れた俺に驚きの眼を開くルーチェだったが、すぐにぱっと花咲くような朗らかな笑みを浮かべる。


「びっくりした~。思ってたより早く帰ってきたんだね。おかえりなさい」


「ああ。まぁ、色々あってな……」


 歯切れの悪い俺を見てすぐに察しがついたようだ。ルーチェは神妙な面持ちになった。


「なにかあったんだね。みんなを呼んでこようか?」


「いや……」


「うん?」


「エマって子がいるだろ? その子を呼んできてほしい」


 俺の緊張感をもって言うと、ルーチェの表情がふと曇った。

 なぜそんな顔をするんだ。

 なんかあったのか。


「あのねロートスくん。そのエマって子なんだけど……」


 ルーチェは眉尻を下げ、言いにくそうに言葉を区切る。

 なんだ。

 一体何があったというんだ。


「いま……拷問にかけられてるの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ