表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
967/1001

二人の少女の繋がり

 どういうことだ。


 そんな言葉を口にする時間も惜しい。

 俺はすぐさまエルフの里に向かい、事実確認する以外になかった。


「いま里はわりと大変な状況でね」


 道中、アナベルが説明してくれる。


「コッホ城塞の崩壊でそこかしこに瓦礫が落ちてきて、大きな被害が出てるの」


 崩壊の原因を作った俺には耳が痛い話だ。


「安心して、誰もパパのせいなんて思ってないから。むしろエルフ達は喜んでる。まことの世界の復活は近いってね」


 エルフ達は元の世界に戻ることを望んでいるから、そういう考えに至るのもおかしくない。


「けど、被害が出てるんだろ。ケガ人とか……言いにくいが、死人だって」


「ううん。幸い人的被害は出てないの。その、エマって人のおかげでね」


「なに?」


「私達がコッホ城塞に入った頃、ちょうどその人が森にいたみたいでね。落ちてきた瓦礫の中でも致命的なものを防いでくれたんだって」


「なんだと?」


 俺の知るエマにそれほどの事ができるとは思えない。彼女が優秀だったのは魔法学園新入生という枠の中での話だ。空から落ちてくる無数の巨大な瓦礫を選別して防ぐなんて芸当ができるわけがない。

 エマはなぜ力に目覚めたのだろうか。何がエマを変えてしまったのか。

 同行するヒーモが俺の内心を察したか、いつになく真面目な声色で言葉を発した。


「エマくんは女神となったエレノア嬢のアバターだ。人の身を具している以上、神性そのものを持っているとは考えにくい。だが、それに準ずる能力に目覚めたとしてもおかしくはない」


「準ずる能力?」


「帝都で『アウトブレイク』が起こった時、『クロニクル』内部に潜ったのを憶えているかい? そこで吾輩達は、女神エレノアの化身と戦っただろう」


「ああ。憶えてる……たしか、『クロニクル』のペネトレーションによって魔法学園全体がダンジョン化してたんだよな。俺達はエレノアの化身を倒すことで『クロニクル』を終わらせ、ダンジョン化を終息させた」


 俺は記憶を辿るようにあえて詳しく言葉にした。


「あの時、吾輩とエマくんの魔法が異常なほど強くなっていた。理由は結局わからずじまいだったが、エレノア嬢の化身と接触し、彼女の神性の一端に触れたことがその理由だったのかもしれない」


「どういうことだ」


「つまるところ、前世界の残滓に触れ、創世前の力を取り戻すきっかけを得たということだ。吾輩は彼女と直接的な接点はなかったが、キミという人物を挟んで比較的近い関係の輪の内にいた。そしてエマくんは、いわば彼女自身だ」


 創世前の力っていうのはスキル『無限の魔力』のことだな。たしかに『無限の魔力』とエレノアの魔法技術があれば、瓦礫に対処することは可能かもしれない。


「お前は関係が遠かったから思い出すのに時間がかかった。エマはほぼ本人だからめっちゃ早かった。そういうことだな」


 ヒーモは頷く。


「エマくんはひどく混乱した様子だった。力を取り戻し、真実に辿り着いたことでわけがわからなくなったんだろうね。だからキミを追った。すべての中心にいるロートス・アルバレスという男に会えば、答えが得られると信じて。ま、これは吾輩の想像にすぎないけどね」


「ヒーモ……エマは、エレノアの記憶を持っているのか?」


「それは不明だ。吾輩は世界が創り変えられても吾輩だが、エマくんはエレノア嬢本人じゃない。たとえ同一の本質を共有していたとしてもね」


 まじか。


 そんな話をしている内に、俺達はエルフの里についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ