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真・なんだって

「なぁイキール」


「なに」


「お前って、エレノアのアバターなんだよな?」


「アバター?」


 ぽかんと首を傾げられた。


「エレノアが作った現身みたいなもんだよ」


「いや……違うと思うけど」


「ええ?」


 てっきりイキールがそうなのだとばかり思い込んでいた。

 たしかにさっきの現象を思い返せば、辻褄は合わないが。


「なぁ……お前って、どうやって裏世界に来たんだ?」


「言ったじゃない。あの黒いゲートを通って――」


「そうじゃなくて、あの球体は一体なんなんだよ」


「なにって……知らないわよそんなの」


 どういうことだ。

 イキールが創り出したものじゃないのかよ。


「あれは……えっと、あんたを追いかけてきた子が作ったものよ。本人は魔法? って言っていたけど……」


「俺を追いかけて……? 誰だそれは」


「ほら、クラス分け試験の時に一緒にパーティを組んだあの子いたじゃない。名前、なんだっけ?」


 おいおい。

 うそだろ。

 そんな馬鹿なことがあるかよ。


「エマ・テオドア」


 俺が呟くと、イキールは得心したようにぽんと手を叩いた。


「そうそう。エマ・テオドアよ。思い出したわ」


 血の気が引く思いだ。

 つまりエレノアのアバターは、エマだったってことか。


「ロートス!」


 頭上から声。

 見上げると、流線型のフォルムをしたワイバーンがこちらへ降下してきていた。

 ワイバーンには一人の少年が騎乗している。


「ヒーモ?」


 慌ただしく着陸したヒーモ・ダーメンズは、いつになく真剣な面持ちだった。


「無事みたいだね。キミのことだから心配はしていなかったが」


「どうしてここにお前が」


「いやね。キミがデメテルを発った後、急にエマくんがおかしくなったんだ。キミがいないことにひどく落ち着かない様子でね。果てにはキミを追いかけてグランブレイドに行くと言い出して。吾輩も止めたんだが、どうしてもと聞かなくてさ」


「エマが、そんなことを?」


 どういうことだ。彼女にどんな心境の変化があったのか。


「吾輩も忙しかったから放っておいたんだが。どうやら失敗だったみたいだ」


「なに?」


「ついさっき、吾輩達は夢で会っただろう」


 エレノアに張り飛ばされて気絶した時のアレか。


「あの時、吾輩も全て思い出したんだ。デメテルの真実。吾輩達が創世以前から大親友だったことも含めて」


 なるほど。イキールと同じか。

 だからワイバーンを乗りこなしているんだな。前世界で持っていたテイム系のスキルも取り戻したんだ。

 いつの間にか親友から大親友にクラスアップもしている。


「いいかロートス。エマくんはエレノア嬢の端末だ。彼女と本質を同じくする人の身を具した存在。その女を裏世界にけしかけたのもエマくんなんだよ」


 ヒーモに睨まれたイキールは、更に気まずそうに視線を逸らしていた。

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