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ここからラストスパートに入る感じ

 セレンが言うマッサ・ニャラブの幻影。

 それは裏世界に構築された最後の街、ジェルドの里だ。

 俺達は転移魔法を用いてそこに移動する。


 見渡す限りの砂漠。そのど真ん中にぽつんと立つ石壁に囲まれたオアシスの都市。

 街の中心に悠然と佇む水の塔を見上げ、しみじみと吐息を漏らす。


「懐かしい」


「ここは初めて来るっすね~。ジェルドの里ってこんな感じだったんすね」


 ウィッキーが物珍しそうに街並みを見渡している。

 未舗装の砂の大地。石造りの建物群。塔から繋がる涼やかな水路。

 マッサ・ニャラブの特徴的な景色だろう。


「神秘的でいい街ですけど、暑くないですか?」


「気のせい。ここは精神世界だから」


 セレンはそう言うが、気のせいでも暑く感じるのが精神世界だ。


「やっぱり暑いのです」


 サラがローブを脱いで捨てると、砂の上に落ちたローブは細かな粒子となって消えていった。サラが不必要だと判断したことで、ローブが根源粒子に戻ったのだ。これもまた裏世界の特徴か。

 この場には俺を含め四人と一匹がいる。

 原初の女神とサニーは図書館に置いてきた。報連相より速さを優先させなければならない状況だってあるさ。


「さ、街に入ろうっす。オルタンシアを見つけて、核心部へ向かうっすよ」


 そうだ。〈八つの鍵〉の最後の一人であるオルタンシアがここにいる。


「核心部に向かうにはオルタンシアの力が必要っす。あの子の『インベントリ』と、ムーディたんの邪気があれば、裏世界の次元を歪ませて核心部へ向かう穴を空けることができるっすよ」


 ムーディたんは俺達の後ろでぐったりとしている。砂漠の日差しと暑さにやられているようだ。


「スキルの力が必要なのか?」


 オルタンシアのスキルは、異空間に物を収納できるスグレモノだ。


「『インベントリ』の本質は、次元に干渉する力っす。単体だと世界に穴を空けるほどの性能はないっすけど」


「ムーディたんの邪気がそれをブーストするってわけだ」


「そーゆーことっす」


「オルたそのスキルをそんな風に使うとは思わなかった」


「師匠の発想力は常人の域を超えている」


「えっへんっす!」


 セレンの淡々とした賞賛を受けて、鼻を高くするウィッキー。


「もう……おねぇちゃんたら」


 呆れたように呟くサラだが、姉が褒められているのを見てどこか微笑ましそうにしている。


「オルたそは……たぶんあそこにいると思う」


 俺は街の中央の塔を指す。


「あの根元にジェルドの王宮がある。前世界でオルたそを見つけた時はあそこにいた」


「縁が深い場所ってことっすか。じゃ、ロートスはあそこを頼むっす。ウチらは手分けして別々に捜索するってことでいいっすか? あ、サラはウチと一緒に行くっす」


「うん。わかった」


「問題ない」


 つまり俺、セレン、ウィッキーとサラの姉妹の三手に分かれてオルタンシアを探すってわけか。たしかにその方が速いな。


「見つけたら空に合図を送って、水の塔に集合ってことにしよーっす」


「おっけー」


 そういうわけで、俺達はオルタンシアの捜索を開始した。


 あと、もうすぐだ。

 もうすぐ全てが終わる。


 待ってろよ。

 エレノア。

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