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召喚獣的な

「なんとかなったな」


 沈黙したネコバスをよそに、俺はウィッキーと目を合わせた。


「ロートスっ。来てくれたんっすね! 会いたかったっすよー!」


 パタパタと駆け寄ってくるウィッキー。

 こいつ、嬉しそうにしやがって。


「まったく」


 これでもかというくらい上下に揺れるおっぱいを目の当たりにして、俺の手が勝手に動き始める。


「はわっ」


 抱きついてこようとしたウィッキーのおっぱいを、カウンター気味に鷲掴みにする俺の手。鷲掴みとは言っても決して乱暴ではなく、その手つきは優しさと愛情に満ちており、まるで小動物を愛でるかのごとき愛撫であった。


「んっ。あ……ちょっ、と」


 わずかに抗議の視線を向けてくるも、抵抗の素振りはない。

 恥じらいの吐息を漏らして頬を染めるばかり。

 なんだこの反応。初心すぎる。


 精神体である今の俺に性欲はないが、性欲だけがおっぱいを求めるわけではない。

 おっぱいにはあらゆる概念が内包されている。


 愛情。

 平和。

 誠実。

 純粋でありながら、妖しくもあり。

 優しさと強さも兼ね備えている。


「も~。ロートスは相変わらずっすね~」


 ウィッキーはおっぱいを揉みしだかれながら、満更でもない顔をしている。

 精神体であるから性的興奮はしていないようだが、それでも愛を感じてはいるのだろう。いやむしろ肉体がないからこそ余計に心を感じられる。

 つまり俺は、心の手で心のおっぱいを揉んでいるのだ。

 思う存分おっぱいを体感した後、ウィッキーを抱き寄せた。


「あ……」


 後頭部に手を回し、癖のある髪に顔をうずめる。

 ウィッキーは何も言わず、俺の背中に腕を回してきた。


 言葉は必要なかった。お互いの温もりが心を繋いでいる。抱きしめる力にも力が入るが、ずっとこうしているわけにもいかない。

 俺達はどちらからともなく口づけをすると、名残惜しげに体を離した。


 目下の問題は、まだまだたくさんあるのだ。


「それで、こいつがペットってどういうことだ?」


 いくら図書館が大きいからって、このサイズじゃ放し飼いも一苦労だろう。


「あー……この子はっすねー。ウチが作ったんすけど、なかなか気性が荒くて持て余してて」


「作った? こいつを?」


「ウチの研究の集大成ってやつっす。一応」


 ふむ。


「このデカネコが放ってる邪気はなんだ? 魔力じゃなさそうだし、得体が知れない。瘴気にも似てるが、ちょっと違うよな」


「おおっ」


 ウィッキーが目を輝かせた。


「わかるっすか? さすがロートスっす。お目が高いっすねー」


 白い歯を見せて笑うウィッキーは、ネコバスの前で大きく両腕を広げて見せる。


「名付けてムーディたん! 裏世界に風穴を空ける希望の猫っす!」


 この世のものとは思えないほどの美声が、図書館に響き渡った。

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