ギルドいきてぇ
国内最大級というだけあって、王都の冒険者ギルドははんぱなくでかい建物だった。魔法学園の本棟にも匹敵する。
まずは受付にいく。長いカウンターには十数の窓口があり、それぞれに受付嬢が座り仕事をこなしていた。
その中の一つに向かい、学生証を取り出す。
「あの、魔法学園の冒険者クラブから来たんですけど」
「はい。ようこそ冒険者ギルドへ。本日のご用件は?」
受付の女性は大人びた営業スマイルで応対してくれた。
半ば無意識的に『イヤーズオールドアナライズ』を発動してしまう。二十四歳。何で今使っちゃんたんだ。
「えっと、今からできる依頼はありますか?」
「今から? あるにはあるけど、もう日が暮れちゃうわよ? 学生さんには、少し荷が重いかも」
たしかに、夜にモンスター退治とかは、よほどの手練れじゃないと自殺行為みたいなもんだよな。
「危険じゃなければいいです。何かありませんか?」
「そうねぇ……」
お姉さんはパラパラと手元の書類を検める。
「ああ、こんなのはどう? 報酬は即金で2万エーン。ナハトモスクの採集なんだけど」
「ナハトモスク?」
なんだそりゃ。
「ナハトモスクは薬草の一種ですよご主人様。夜にしか咲かない光る花をつけるんです」
「あら、詳しいのね」
「さすがサラだな」
「えへへ」
こういった知識面で助けてくれるのは大変ありがたい。
「街を出て二キーロメントルほど歩いたところに群生してるわ。近いんだけど、夜はモンスターが出る可能性もあるからね。ラットマウスだけど」
「うーん」
俺は顎を押さえる。
ちなみに、一メントルはちょうど一メートルで、千メントルで一キーロメントルになるのだ。非常にわかりやすい。
そしてラットマウスというのは、訓練を受けていない子供でも無双できるようなザコモンスターだ。ちょっと大きなモルモットくらいのサイズだな。正直こいつらなら、何匹出てきても怖くない。
「条件は悪くないな。セレン、どうだ?」
「かまわない」
「なら決まりだ。お姉さん、その依頼受けるよ」
「はい。じゃあこの書類にサインを。すぐに向かうかしら?」
「ああ」
俺は提示された書類にサインをしながら、そこに書いてある依頼の詳細を確認する。
「気をつけてね。F級相当のあなた達には簡単な依頼しか出せないけど、結果を出せばランクも上がっていくわ。頑張ってね」
なるほど。そりゃ、セレンの為にも頑張らないとな。
「よし、パーティ結成初の依頼だ。気張っていこうぜ」
俺が言うと。
「えいえいおー!」
サラが元気よく拳を突き上げ、
「おー」
セレンが無感動に真似をした。
まぁ、薬草を採ってくるだけだ。そんな大したことにはならないだろう。
ラットマウスごときに後れを取るとは思えないしな。
ま、さくっと終わらせて二万エーンゲットするかなぁ。




