表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
934/1001

無敵系

「ご主人様!」


 サラの叫び。

 シーラは俺の胸に剣を残したまま飛び退く。


 四半秒後、レオンティーナは俺に向かって容赦なく大槌を振り下ろした。

 大地が轟く。

 グランオーリス王城の庭園がひっくり返る。石畳や城壁、樹木などが宙を舞い、衝撃で散り散りになっていく。

 強烈な神性による攻撃は、その余波だけで空間そのものを破壊するほどの威力だった。


 これは流石に、まずいだろ。

 危機感を抱いた俺は即座に指を鳴らす。

 同時に城の崩壊が止まった。時間が停止したかのように、破壊の瞬間のまますべてが停滞した。


「この世界は、エレノアの記憶から創られてる。いくらあいつ自身の意思だとしても、壊されちゃ困るな」


 レオンティーナの大槌は俺の頭部に直撃していた。

 破壊のエネルギーのほとんどは俺に与えられたものだったが、俺にはかすり傷一つついていない。それどころか、俺の頭との衝突に耐えられなかった大槌は、見るも無残に砕け散っていた。


「もういい。わかった」


 守護隊の皆は本気だ。

 真剣にエレノアの味方をし、本気で俺を殺そうとしている。


「お前達の心は、十分に伝わった」


 胸に突き刺されたシーラの剣を無造作に抜き、地面に突き立てる。

 出血はなく、傷は瞬く間に治っていく。俺の心臓は剣で貫かれたくらいじゃビクともしないんだよなぁ。

 我ながら、すごい。


「見せてやる。お前達の主が、どれほどなのか」


 俺が剣を掲げると、今まさに崩壊しつつある城が急速に修復され始めた。まるで巻き戻しでもしているかのように、大槌による破壊がなかったものになっていく。


「これは……世界を再生している……?」


「うそ……? 神性による不可逆の破壊をもたらしたのに」


 シーラとレオンティーナが瞠目していた。


「神性。世界の管理権か。そんなもんは俺にとっちゃなんでもねぇ。より強い権限をもって書き換えちまえばいいだけのことだ」


 そう。できるのだ。

 〈妙なる祈り〉ならね。

 あっという間に元通りになった城。完全に崩壊する前なら、完全に修復することなんてわけないのさ。


「さて」


 俺は剣を虚空に収納し、戦闘態勢を解いた。

 もう戦いは終わり。いや、最初から戦いにすらなっていなかったか。


「今回は退いたらどうだ? このまま俺とやり合うのは、お前達にとってもいい選択じゃないだろう」


 シーラとレオンティーナはアイコンタクトを交わし、頷き合う。


「撤退」


 決断してからは速かった。

 守護隊の二人は一瞬にして姿を消し、その場から離れていった。

 後には、戦いの残り香だけがあった。


「ご主人様……」


 サラが乾いた声を漏らす。


「まさか、シーラさんが……アルバレスの守護隊が裏切るなんて」


 信じられないといったところか。

 そりゃそうだろう。俺もそうだった。


 だが、あれこそが守護隊の使命。

 今はまだ口にできない、必要な役割なんだ。


「ロートス!」


 城門を跳び越えて、サニーと原初の女神が追い付いてきた。


「二人とも無事か? いや、聞くまでもないか」


「ああ……だが妙だな。奴ら、急に退いていったぞ。お前が何かしたのか? ロートス」


「まぁ、そんなとこだ」


 守護隊の襲撃をとりあえず撃退したのはいい。


「外の様子はどうだ?」


 俺の問いに、原初の女神が首を横に振った。


「ダメです。アヴェントゥラは崩壊しました。残っているのはこの城だけです」


「……まじかよ」


 どうして急に街が壊れたのか。

 その原因も、この城に入れば分かるかもしれない。


「行くっきゃないな」


 そういうわけで、俺達は城に足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ