キミ達は何をするか
短い二人の時間を過ごした俺とサラは、サニー達の後を追って次なる街に辿り着いた。
長大な城壁に囲まれた立派な都市。
眼前にそびえるのはあまりにも強固で、かつ絢爛な城門である。
グランオーリスが誇る王都アヴェントゥラが、そこにあった。
「存外早かったな。もういいのか」
追いついてきた俺達に対して、サニーは淡々とした態度だ。
「ああ。待たせてすまん」
俺とサラが手を繋いでいることに気付いたサニーは何か言いたげだったが、ぐっと言葉を呑み込んだようだ。
「アヴェントゥラか。随分と懐かしい」
「そういやサニーはグランオーリス出身だっけか」
「王都には、それほど思い入れはないけどな」
「参りましょう。ここに何かがあるはずです」
原初の女神が足早に進んでいく。
俺達もそれに続いた。
アヴェントゥラの街並みは王都と呼ぶにふさわしい威容だった。
俺も世界会議の際にはここに滞在していたが、改めてグランオーリスの文明の高さを思い知る。
ここにも住民の往来はあるが、みな存在が希薄で、半透明の人影が消えたり現れたりしながら街の喧騒を再現している。
これらもすべてエレノアの記憶から生み出された幻影なんだろう。
「さっきから気になっていたんだけどさ」
街並みを歩きつつ、俺はなにげなく口を開いた。
「さっきのリッバンループといい、ここといい、一体なんなんだ? アインアッカ村もそうだ。精神世界っていうのは、一体何のためにあるんだよ?」
その質問は原初の女神に投げたものだ。こいつなら知ってそうだから。
「精神で創造された裏世界は、まさに世界の本質そのものです。例えるなら……そうですね。あなたが元いた世界で発展していたコンピュータを引き合いに出しましょうか」
「コンピュータ?」
「ディスプレイを思い浮かべてください。根源粒子で構成されたすべての物質は、その画面に映し出された映像です。あるいはスピーカーから流れる音声だと思えばよいでしょう」
西洋鎧を纏ったパツキン美女からそんな単語を聞くとは思わなかった。ミスマッチだ。
「それに対して、裏世界は0と1の羅列なのです。この裏世界があるからこそ表の世界が成り立つといっても過言ではありません」
「プログラムってことか?」
「もちろんこれはあくまで例えであって、厳密には異なります。ですが限りなく近い関係性でしょう。この裏世界において生じたあらゆる出来事は、表の世界に対しクリティカルな影響をもたらします」
「あー……つまり……」
俺は言葉に詰まる。
「結局、俺達は何をすればいい?」
サニーが俺の言葉を引き継いだ。
そうだ。それが聞きたかったんだ。




