唯一の方法
「なぁサニー」
「なんだ?」
「お前、モテないだろ」
「は?」
「お前、顔は整ってるけどなんか暗いんだよ。話も面白くないし、いつもどこか斜に構えてる感じがマジで陰気くせぇ。そんなに頭がよくないくせに小難しいことを考える節があるし。それになんか、女子に引かれるような特殊な性癖してそうだ」
「おい、突然なにを――」
サニーが怒り出したところで、俺は村の門を通過する。
不可視の障壁は俺を拒まず、ぬるりと俺の体を通り抜けた。
「なに……!」
怒りを驚きに変えるサニー。
「通った? 一体なぜ……!」
「なるほど。そういうことですか」
原初の女神は得心する。
「おい。どういうカラクリなんだ」
「この門の文句を言葉取りに受け取ればよかったのです。心ある者は立ち尽くせ。ロートスは今あなたに心ない言葉を浴びせかけた。明らかに心ある者の行動ではありません」
「悪口が鍵だというのか」
「一つの方法として有効ということです。ここは精神世界ですが、心の状態を視覚として感じられるわけではない。心ある者か、あるいは心ない者か。その者の振る舞い如何で決まるでしょう」
「一応の道理は通っているが……」
原初の女神の言う通り。
俺はサニーを貶すことによって心ない者認定されたわけだ。
「正しくあろうとしたことが、むしろ自身を閉じ込める枷となっていたのか……悪趣味な呪いだ。お前の幼馴染は底意地が悪いんだな」
サニーはうんざりしたように首を振る。
「どうかな。まぁ、人間ってのは誰でも意地悪な一面を持ってるもんさ」
「人間……ですか」
原初の女神は噛みしめるように言葉を紡ぐ。
「あなたは、女神となった彼女を人として扱うのですね」
「ん? ああ」
何気なく言っただけだけど、そういう風に受け取られるのか。
「俺はあいつを神だと思ったことは一度だってない。今までも、これからもな」
なにせ、俺自身が自分を人間だと疑ってやまないんだからな。
「さ、解決法は見出したんだ。さっさとここを通り抜けて街に向かおうぜ」
俺達は三人で互いに頷き合い、その意志を確認し合った。
にわかに仲間らしくなってきたな。
まさか、こんな面子になるとは、想像だにしていなかった。
これもまた人の縁。運命というやつなのかもしれないな。
そういうわけで、原初の女神は門に唾を吐きかける。
サニーは局部を露出することで、心ない者として村の外に出ることに成功したのだった。




