表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
895/1001

丸出し

 色とりどりの魔法が重なり合い、虹のような彩りを為している。盾代わりにした剣が、見る見るうちに削れ、溶け散り、崩れ去っていく。

 守護隊の魔法はエレノアの神性を帯びているため、あらゆる物質を破壊する力を有している。


 だが俺には、アデライト先生がくれた『無限の魔力』がある。

 アイリスのおかげで得た尋常ならざる肉体がある。


 前へ。

 さらに前へ。


「うおおおおお!」


 果たして俺は、殺意の帳を破ってシーラの眼前へと肉薄した。


「シーラッ――!」


 視線が交錯する。

 生気のない無色の瞳。対する俺の眼力は燃え滾る決意を秘めている。


「目を覚ませ!」


 俺は朽ちた剣を放り捨て、拳を握りこんで渾身のパンチを放つ。

 手加減はなしだ。シーラはこれくらいでどうにかなるタマじゃない。

 そう信じて、放った一撃だった。


 だが、数人の守護隊が各々の武器をもって俺の拳を防いだ。

 凄まじい衝撃と音響が爆ぜる。

 支援防御に入った面々が吹き飛び、同時に武器も砕け散っていくのを確認しながら、俺はシーラの目の前で無防備な姿を晒していることを危惧する。

 まずい。


「『キラー・レティセンシア』」


 シーラがスキルを口にする。

 俺の脳裏には、かつての戦いの光景が蘇っていた。

 親コルト派による王都襲撃の際、シーラが死天衆の一人と戦った時のことだ。あの時、シーラのスキルによって敵の腕がズタズタに斬り刻まれていた。

 その記憶が、目の前の視界と重なる。


 俺は咄嗟に飛び退こうとした。『タイムルーザー』を使えば一瞬にして離脱できる。

 だが。

 使えない。

 コッホ城塞内部は時空の歪んだ空間だ。そんな環境では『タイムルーザー』は正常に作用しない。確認を怠った俺のミスだ。


 瞬く間に、俺の腕は細切れになった。

 二の腕から先が、まるでシュレッダーにでもかけられたかのようにバラバラに切り裂かれた。痛みも出血もなく、右腕を失った。

 だが、それ以上の被害は食い止められていた。

 アンが放った漆黒の弾丸が、シーラに襲いかかったおかげだ。


「うおおぉっ!」


 飛び退いていた俺は、腕を失ったことでバランスを崩し転倒する。

 そこに追撃を加える奴がいた。色褪せた鳶色の瞳。レオンティーナだ。


「ちくしょっ!」


 俺は悪態を吐きつつ、ごろごろと転がって加速する。

 一秒前に俺がいた地面に、鋭い剣が突き刺さった。


 更なる追撃を阻止すべく、リリスのレーザーが飛来したが、レオンティーナは大きくバックステップを踏むことで回避。

 俺はアンの隣に戻り、再び守護隊と対峙する。


「やっぱつえーな。あいつらは」


「ですが、数名は戦闘不能になりました」


 さっきのパンチが効いたみたいだな。シーラを守るために防御した奴らは、すでに立ち上がれないほどのダメージを受けたようだ。

 アンが感心して言う。


「恐るべくは主の気迫です。彼女達も、迂闊に手出しできないでしょう」


「どうかな。あいつらに怖いっていう感情が残ってたらいいけど」


 なにせ、主である俺に剣を向けるくらいだ。表情からして、人らしい感情はなさそうに見える。


「気を取り直していきましょう。向こうはたかが十人です」


「数だけ見りゃ不利だな」


「問題ありません。後はあーしとリリスがやりましょう。主は見物なさってください」


「なんだと?」


 アンは自信ありげな笑みでゆったりと前進する。


「リリス。殲滅なさい」


 アンの静かな号令がこだました。

 次の瞬間、リリスの着ている服がビリビリに破れて四散した。

 リリスは、全裸となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ