すごいサポート
驚いているのは俺だけじゃない。
「エレノアって……女神エレノアですか?」
「まぁ、その化身ってとこかな」
「そんな……」
信じられないといった顔のエマ。
当然だ。
俺だってにわかには信じられない。
だが、この場にエレノアの化身が現れたことが、一つの証明になる。
この場が外なる神につながっているという証明にな。
俺は、めっちゃカッコいい動作で剣を抜いた。鞘走りの鋭い音が、白い空間にこだました。
「お、おいロートス……まさかとは思うが、戦う気なのかい? 女神と」
「戦うっつーか。倒すんだよ」
迷いはなかった。
俺は地を蹴って化身へと猛進。渾身の刺突を放つ。
だが、初撃は華麗なダッキングによって回避される。
「うお」
これを躱すかよ。
反撃の蹴りを予感した俺は、地面に張り付くようにして姿勢を落とした。
頭上を、大砲みたいな衝撃が通り過ぎていく。化身の回し蹴りだった。
すかさず距離を取るが、化身はぴったりと密着するくらいの距離を保って追随してくる。
「ははっ。そんなに俺が好きかよ」
剣を振る隙間もないので、頭突きをお見舞いする。
化身の額が文字通り大きく凹んだ。
「隙あり」
俺の剣が、化身の首を斬り飛ばす。
エレノアの顔をした白い塊が、放物線を描いて宙を舞った。
油断しちゃいけない。
これで終わりのはずがない。
俺はふわりと軽やかなバックステップで、ヒーモとエマの近くまで戻る。
「え? いま……」
「ロートス。いったい何が起きたんだ? 吾輩にはなにも見えなかったが」
そりゃそうだ。
俺は『タイムルーザー』を使用して、緩やかな時の中にいた。
いつもならそれだけでケリがつくんだが、相手がエレノアの化身となると話は別だ。
向こうだって『タイムルーザー』を使ってくる。そもそもこの力はエレノアから与えられたものだろうから。
つまり、俺のチートが通用しないってことだ。
こうなると、俺一人の力では勝てるかどうか怪しい。
「ヒーモ! エマ!」
「は、はいっ!」
「なんだっ?」
「俺が奴に斬りかかるから、ありったけの魔法をしこたまぶちこめ!」
「え、そんなことしたらキミにも当たってしまうじゃないか!」
「いいからやれ! 戦果をあげたいんだろ!」
たとえ二人が一般的な魔法学園新入生ほどの実力しか持っていないとしても、今は猫の手も借りたい状況だ。
こうして話している間に、エレノアの化身の失った頭部が再生している。
「いくぞ!」
俺は再び化身へと肉薄。卓越した剣技を持って疾風にごとき連撃を浴びせる。
だが、そう簡単には当たらない。残像を残して動き回る化身を捉えるのは至難の業だ。
そして、相手だって逃げてばかりじゃない。
俊敏な動きで俺の懐に入り込んだ化身は、両の拳による二連撃を繰り出す。
腹に鈍い衝撃が二発。俺はひととき呼吸を忘れた。
「くそっ」
反撃の膝蹴りを打つも、吹っ飛ばしただけで大きなダメージはない。
だが、距離が離れたところにヒーモとエマの魔法が飛来していた。
絶好のタイミングだった。あれは回避できない。
その直感は正しく、凄まじい威力のフレイムボルトとフリジットアローが同時に着弾した。
見上げるほどの火炎と氷塊が、左右に爆ぜて広がった。
「えっ」
なんだよ。この威力は。
ヒーモとエマが扱える魔法の域を、はるかに凌駕しているじゃないか。
一体、どういうことだ。




