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容量は何バイト?

 エンペラードラゴンは、世界樹の根元に着陸。

 森の中には大きな村があった。エルフの里だ。


 半端なく露出度の高い衣装は、前世界のエルフとまったく同じ装いだった。乳首と恥部しか隠れていない。あれでよく森で生活できるものだと思う。

 そして、女しかいないのも前と同じだ。


「この里に男が入るのは、初めてのことかもな」


 フィードリッドが言う。


「そうなのか? エルフの古い預言に『清き異国の雄』ってのはないのか?」


「ある。一万年の太古より伝わるエルフの預言だ。エルフの里に危機が訪れる時、いつの世も必ず『清き異国の雄』が現れエルフを救うと言われている」


「なのに俺が初めてなのか?」


「フフ。古より一度たりともエルフの里に危機が訪れていないということだ」


「なるほど?」


 預言の通りなら、そうなのかもな。


「そんで、ちゃんと説明してくれるって話だったよな?」


「そう焦るな。然るべき場所に連れていく」


 フィードリッドは、ローブを脱いで他のエルフに渡すと、すたすたと歩いていった。

 ノースリーブの上衣に、マイクロニミスカート。他のエルフに比べたら露出は少なめだが、それでもかなり痴女風味があった。


 俺はその背中を追う。

 そして辿りついたのは、これまた見覚えのある家屋だった。


「オーサの家?」


「まさか族長の名前まで知っているとはな。にわかには信じられなかったが、やはり世界樹の記憶は真実のようだ」


 独り言を呟きつつ、オーサの家に入るフィードリッド。

 家の中に入ると、テーブルに数名の人物が着席していた。


 上座にはロリエルフのオーサ。

 次席に副長。そしてエルフの女達だ。

 彼女達の視線が、一斉に俺に集まる。


「族長。予定通り、ロートス・アルバレスを連れてきたぞ」


「ご苦労でやんす。フィー」


 フィードリッドは空いている席に腰掛ける。

 目線で促され、俺も空いている席へと座ることにした。


「ようこそエルフの里へ。歓迎するでやんすよ。ロートス・アルバレス小公爵」


「ああ……」


 オーサは、俺の記憶の中の姿とまったく同じだった。

 だが、俺の知るオーサとは同じでありながら別人なのだろう。ヒーモがそうであるように。


「どうして俺をここに連れてきた? 予定通りってどういうことだ」


「言葉の通りでやんす。永い間、あっしらは探し続けていたでやんすよ。この世界におけるイレギュラーを」


「イレギュラー? 俺が?」


「わかっているんじゃないでやんすか? あんたは、創世以前の記憶を持っているはずでやんす」


「……ああそうだ。どうしてそれをお前達が知っているのか、詳しく聞かせてもらおうか」


「もちろんでやんす。その為にここに来てもらったんでやんすから」


 オーサはいたって落ち着いた様子だ。

 対して俺は、努めて平静を装うので精一杯だった。


「とは言っても、あっしらから伝えられることはそう多くないでやんす。世界樹の守り手であるエルフといえど、『ユグドラシル・レコード』にはごく一端しか触れられないでやんすからね」


「かまわない。とりあえず話を聞かせてくれ」


「わかったでやんす。副長、説明を」


 オーサと副長の視線が交差する。


「族長。本当にこの人間に教えてもいいナリか? 世界樹に仇なすかもしれんナリ」


「その話はいまさらでやんすよ。いずれにしても、変革を起こさなければ世界は歪んだままでやんす。あっしらもいい加減、勝負に出る時がきたということでやんすな」


「……わかったナリ。念の為、聞いてみただけナリよ」


 副長の鋭い目が俺に向く。


「ロートスとやら。貴様に創世以前の記憶があることを、なぜ我々が知っているのか。それは我らエルフが『ユグドラシル・レコード』に触れることができるからナリ」


「さっきも言ってたけど、なんだそれ」


「分かりやすく言えば、世界樹の記憶ナリ。『ユグドラシル・レコード』には、原初からこの世界で起きたすべての出来事が記録されているナリ」


 アカシック・レコード的なやつか。


「我らにも信じがたいことナリが、『ユグドラシル・レコード』によればこの世界は女神エレノアによって都合よく作り変えられたものナリよ」


「ああ。知っている」


 なにげなく答えただけだったが、その瞬間にエルフ達の目の色が変わった。


「やはり真実でやんすか。いいや、それよりも、本当に創世以前の記憶があるのでやんすか?」


「あるよ。俺はエレノアが世界を創り直すのを止めようとして、失敗した」


 エルフ達に驚愕が走る。


「女神エレノアは、なぜそんなことをしたナリか?」


「さぁな。俺にはよくわからん」


 事情があったとはいえ、俺にも責がないとはいえない。

 エルフ達は互いに顔を見合わせ、困惑したり驚愕したりしている。


「話を戻すナリ。我々エルフの祖先は、数百年に渡る議論の結果、世界をあるべき姿に戻すことを決断したナリ。そして結成されたのが義勇団〝ユグドラシル〟ナリ」


「世界をあるべき姿に? それはつまり、エレノアが世界を作り変える前の状態に戻すっていうことか? そんなことが、可能なのか」


「わからんナリ。だが『ユグドラシル・レコード』には原初から現在までのすべてが記憶されているナリ。それに触れることができればあるいは……」


 なんてこった。

 俺が諦めきっていたことが、まさか今になって実現可能かもしれないだと?


「我々も手探りで進めている途中ナリよ。幸いエルフは長命ナリ。時間をかけて世界の真実を究明することができるナリ」


「だったら……世界中のダンジョンでペネトレーションを起こしているのも、元の世界に戻すための手段なのか?」


「ペネトレーション? ああ、世界侵食のことナリか」


 副長は得心したように頷く。


「そうナリ。異なる次元に干渉し、外なる神と交信する。その為の世界侵食ナリよ」


 なんだと?

 一体、どういうことなんだ。

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