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なんかパーティ結成したわ

 翌日。

 クラス分け試験が始まった。


 大講堂前広場で説明を受けた後、新入生は揃って『クロニクル』へと向かう。

 魔法学園の片隅に建てられた神殿の中に、白いゲートが鎮座していた。


「ここが『クロニクル』か!」


 ヒーモの声はでかい。


「知ってるかいロートス。この『クロニクル』は、ボスモンスターがドラゴンということで有名なんだ」


「セーフダンジョンなのにか?」


「ああ、もちろん本物じゃない。ドラゴンっぽいモンスターってことさ。正式名称はヒュージ・リザードっていってね。見てくれだけが取り柄の木偶の棒らしい」


「ふーん」


 セーフダンジョンだからそんなもんか。


「しかし、本当にソロで潜る気かい? いくらセーフダンジョンといっても、危険がまったくないわけじゃないんだぞ」


「言ったろ。高度な政治的判断だって」


「ふむ。そういうことなら、吾輩にいい考えがある。おーいエマくん! ちょっと来てくれ!」


 ヒーモは神殿内に散る新入生グループの一つに手招きをした。

 エマだと?

 そしてやってきたのは、おさげのめがねっ娘エマ・テオドアだった。


「このエマくんだが、実は吾輩のパーティからあぶれてしまってね。ほら、クラス分け試験のパーティは四人が上限だろ? だから、組んであげてほしいんだ」


「なぜ俺が」


「キミは大丈夫かもしれないが、エマくんにソロは無理だ。ロートスと一緒なら、安心だと思うんだけどね」


 おいおい。

 エマを一瞥すると、彼女は愛想のいい笑みを向けてくる。


「したたかだな」


 まさかヒーモを通じて俺に近づいてくるとは、なかなかの執念だ。


「どうだいロートス。ここは男として一肌脱ぐべきじゃないか?」


「んなこと言って、お前が損したくないだけだろ?」


「それもある。エマくんはダーメンズ派の一員だ。もし怪我でもすれば、吾輩の勢力も弱くなるし、そうでなくとも成績が悪ければ彼女もかわいそうだろう。だから同じダーメンズ派のロートスに協力してもらいたいんだよ」


「俺がいつダーメンズ派になったんだよ」


「キミがアルバレス派を興さないから、仕方なく吾輩が派閥を作ったんじゃないか。感謝してほしいくらいだ」


「まったく」


 貴族ってのは面倒な身分だ。


「わかった。この娘と組む」


「本当ですか? 公子さま、ありがとうございますっ!」


 エマはにっこりと笑って俺の手を取った。

 こうして見ると、可愛らしい少女だ。素朴な雰囲気の中に、確かな品と可憐さがある。野花のような魅力というべきか。


「わかっていると思うが、今回だけだぞ」


「はい。ありがとうございます!」


 ほんとにわかってるんだか。

 まぁ、いいけどさ。


「諸君、集まったかな!」


 だしぬけに声が響いた。

 見れば、神殿の祭壇の上に、中年の男性教師が立っている。


「本日クラス分け試験を監督する、学年主任のモスマンだ!」


 拡声魔法によって増幅された声量は、広い神殿の隅々にまで響き渡る。


「あれがモスマン先生か。魔法学園の教師の中でも五指に入るという魔導士だ」


 ヒーモが説明してくれるが、あんまり興味がない。


「ではクラス分け試験の内容を確認する。これから諸君は任意のパーティを組み、この『クロニクル』へ潜ってもらう。制限時間は二十分。それまでに最奥部に設置されているメダルを持ち帰ることが目標だ。評価内容については一切公開しない。各々、ベストを尽くすように」


 なるほど。

 たしかに評価内容を知ると、その中で要領よくやろうとする奴も出てくるからな。


「試験開始は三十分後だ。事前に提出したパーティに変更がある場合は、速やかに報告に来るように。以上だ」


 モスマン先生の連絡が終わると、神殿内はにわかに喧騒を取り戻す。


「公子さま。ほら、パーティ変更の報告をしに行きましょう」


 エマが俺の手を引いて歩き出す。

 パーティを早く既成事実にしたいという焦りと、自分は公爵家の嫡男と仲がいいと周囲に見せつけたいという思い。エマからは、その二つが大いに感じられる。


「モスマン先生。パーティ変更の申請をお願いします」


 エマが壇上のモスマン先生に話しかける。


「む」


 俺とエマを見て、モスマン先生は眉を寄せた。


「二人だけかな?」


「はい。あたし達は二人で潜ります」


「人数が少ないからといって試験が有利になるわけではないぞ?」


「心得ています」


「ふむ。とはいえ、新入生たった二人でダンジョンアタックに挑むのは酷であろう。ちょうど今、諸事情でここに来ておらぬ生徒がおる。その者もパーティを組んでおらぬゆえ、このパーティに加入させることにしよう」


「え……でも」


「なに。礼には及ばぬ。教師として、生徒の安全も考慮せねばならぬしな」


 エマはどことなく不服そうだ。


「あの、モスマン先生。その生徒というのは?」


「ああ。その者の名は、イキール・ガウマンという。優秀な剣士だから、安心してよいぞ」


 なんと。

 図らずもイキールとパーティを組むことになるとは。

 高度な政治的な判断とはなんだったのか。


 ま、モスマン先生の提案でパーティを組んだという体にしておけば、エマとの関係も邪推されずに済むだろう。

 モスマン先生、グッジョブ。

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