信念の交差
「お前ら。どうしてここにいる」
俺は当然の疑問をイキールに投げつけた。
「ロートス・アルバレス。貴様とは何かと縁があるようだな」
白銀の鎧を身に纏ったイキールは、ムカつくほどに端整な顔立ちだ。
「王国貴族のお前が、テロリストになるだけじゃ飽き足らず、挙句の果てには女神の手先か? 何がやりてーんだ、てめぇはよ」
「僕は女神の啓示を受けた。創世の真実を知り、人間の不義を知ってしまった。故に、この世界をあるべき姿に戻すと決めた」
「あるべき姿だと?」
「エストなどという偽りの神を排し、女神への信仰に立ち返る」
「それがお前らネオ・コルトの動機ってわけか」
「ネオ・コルトではない。僕の使命だ」
「なに?」
「貴様も世界の歴史には詳しいのだろう? 神代において、人はみな平和を享受していた。だが、愚かなノームによって女神達は仲違いし、今日まで続く混沌の時代が訪れた。僕達はその末裔だ。甚だ罪深い種族だと思わないか?」
「だからエレノアについて、この世界をリセットするとでも?」
「そうだな。一時は軽蔑したが、やはり彼女は見込みがある。世界を一からやり直せば、僕達の罪は消え、女神のもと平和な時代を取り戻せるだろう」
「正気か? 今まで生きてきた人達が積み上げてきたものを、一切合切なかったことにするんだぞ」
「人が積み上げてきたのは、醜い罪の歴史だ」
「俺たちが生きてきた痕跡も、全部なくなってもいいって?」
「結構なことだ」
「喧嘩だな、こりゃ」
やれやれだぜ。
「なぁイキール。お前がここまで弱い奴だったとは思わなかったわ」
「弱いだと? この僕が?」
「そうだろ? お前は罪を贖うつもりがまったくない。罪を認めたくないから、ただ逃げてるだけだ。苦しむ勇気すらない。弱い以外になんて表現すればいいんだ?」
「……どうやら言葉が通じないようだな」
「おいおい勘違いするなよイキール。こうやって話をしてるのは、お前達を思ってのことだぜ。ここで折れてくれれば、俺はお前らをボコらなくて済むんだわ」
「舐めるな。数で勝っているからと驕っているようだが、貴様らな僕とリッターだけで簡単に打ち倒せる」
「試してみるか?」
「いいだろう!」
イキールは威勢よく剣を抜く。
「行くぞリッター! あの時の借りを返すとしよう!」
あの時の借り?
ああ、亜人連邦で決闘した時のね。
「結果は変わらねーって」
「ほざけッ!」
イキールとリッターが、一瞬にして俺の眼前に迫る。
まったく残念だ。
刹那の合間に、俺は二人の攻撃をすり抜け、やり過ごす。
そして、次の瞬間。
イキールとリッターの剣、盾、鎧、着衣の全てがバラバラに消滅した。
もちろん、下着も含めて……な。




