オペレーション
翌朝。
俺達は、グランオーリスの首都アヴェントゥラに到着した。
〈蓮の集い〉の本拠地である。
アヴェントゥラの王城。その広い一室には、神の山に挑むメンバーが揃っている。
俺。
サラ。
アイリス。
アデライト先生。
ウィッキー。
ルーチェ。
セレン。
オルタンシア。
アカネ。
この九人だ。全員、同じテーブルについている。
他のメンバーがいないのは、結局のところ神の山には俺と〈八つの鍵〉の役割を持つ者しか立ち入れないからである。
神の山の聖域には、特別な者しか入ることができないというのは、一度行ったことのある俺にはよくわかる。
「それでは今一度、改めて作戦を確認します」
アデライト先生が、真剣な声色で言った。
「今回の目的は三つ。女神マーテリアの討伐。そして、エレノアちゃんの保護です」
俺にとっては、二年前の雪辱を晴らす機会になるわけだな。
「私達は二つのチームに別れ、間隔を空けて神の山に入ります。先行するチームは、ロートスさん、アイリスちゃん、ウィッキー、セレンちゃんです。戦闘に長けたこの四名で、聖域までの安全を確保。その後、私とアカネさんでサラちゃん、ルーチェちゃん、オルタンシアちゃんを守りながら、先行したチームと合流します」
なるほど。俺は露払いというわけだな。やってやるぜ。
「聖域には九人揃って進入します。何があるかわかりませんから」
「あの」
挙手をしたのはサラだ。
「なんでしょう? サラちゃん」
「先生の『千里眼』で、神の山の様子を探れないのです?」
その質問に、アデライト先生は眉尻を下げた。
「すみません。以前は可能だったのですが、エレノアちゃんがファルトゥールと接触した時点から、神の山全域に強固な結界が張られたようで、一切の干渉ができなくなってしまったんです」
「そんな……」
何か異変が起こっているのは確実だ。
「特に聖域には以前とは比較にならないくらい強い神性が感じられます。ですから、九人で入るんです。もし聖域内ではぐれたら、取り返しのつかないことになるかもしれません」
サラが背筋を震わせる。
他のみんなも、神妙な面持ちであった。
「聖域に入った後は、周囲の安全を確保しつつ、最短距離でマーテリアが封印されている場所に向かいます。ロートスさんとオルタンシアちゃんに先導をお願いします」
「はい……わかりました」
オルタンシアが自信なさげに首肯する。
「何事もなければ、そのままマーテリアの封印を解き、全力をもって滅します。エストの自己防衛機能はエレノアちゃんによってすでに停止していますから、妨害の可能性はないと考えられます。問題は、エレノアちゃんと遭遇した場合です」
アデライト先生の声が、緊張感を帯びた。




