蓮の集い
「よいでしょう。ヴリキャス帝国はネオ・コルトの討伐に協力します。それが潔白の証明になるのなら」
セレンは頷く。
「支援の内容はこちらで決めさせてもらう。それに従うことが誠意だと心得てほしい」
「あまりに無理な注文は拒否いたしますが」
「心配はいらない。ギリギリを提示する」
わお。
セレンもなかなか強く物を言うじゃないか。
「俺からも一つ質問いいかい?」
ネルランダーが手を挙げた。
「どうしてその三国なんだ? なにか理由が?」
「グランオーリス、マッサ・ニャラブ共和国、亜人連邦は国土が連続している。故に同盟を結んだ」
「昨夜のうちに?」
「そう。ネオ・コルトによる襲撃後すぐ」
「なんてこった。しかし、国土が連続しているというだけで同盟を? 普通、同盟は離れた国と結ぶのが常套だと思うが」
その問いに答えたのはアルドリーゼだった。
「余達は、ロートス・アルバレスを中心にまとまったんだよ~」
「なるほど。つまり、本来今日議論されるはずだった、ミスター・アルバレスを中心に世界を一つにしようという議題。三国はそれを先んじて決定したわけか」
「そゆこと~」
「わかった! 俺達ハンコー共和国も、参加する!」
ネルランダーは張り切って言い放った。
「ハンコーもグランオーリスとは陸続きだし、かまわないだろう」
セレンとアルドリーゼが、俺を見る。
俺が決めるのかい。
「いいよ」
「ありがとう」
これでヴリキャス帝国とハンコー共和国も傘下に加わった。やったぜ。
「他の国はどうする? 参加を表明するならこのタイミングが最善だと思うけど」
誘い文句を放つも、声を上げる者はいない。皆、他の国の顔色を窺っているようだ。
「わかった。入らないからって責めはしない。気が変わったら打診してくれ」
この場で簡単に決断できる問題じゃないしな。それぞれの国に持ち帰ってもらうのがいいだろう。
続きはセレンが引き継いだ。
「私達はこの同盟を〈蓮の集い〉と名付けた。この世界に平和を取り戻すために、私達は戦う」
セレンの言葉に、まずアルドリーゼが拍手を送った。次はネルランダーが、そしてヴィクトリア。次第に喝采は広がり、会場全体が俺とセレンを讃えている感じになった。
いい感じだ。
この調子でネオ・コルトを倒し、その勢いのままマーテリアとエストを滅ぼす。
エレノアのことが気にかかるが、そちらは頼りになる奴に任せている。今は目の前の脅威に対処しなければならない。
「ネオ・コルトの居場所に目星はついてる?」
セレンが耳打ちしてきた。
「大丈夫だ。守護隊のみんなが二時間で見つけてきてくれた」
「すごい」
「すぐに作戦を開始するぞ。善は急げだ」
ネオ・コルト討伐は、そのままファルトゥールに繋がる。女神をこの世界から排除するまで、止まるわけにはいかない。




