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身を固めるんか

「というわけで事後承諾をしてもらいに来た」


「あー。わかった。みんなが求めるならやるよ。旗印になるための実績はあるんだろうし」


「魔王を倒しましたからね。ロートスはすごいです」


「すごい」


 なんか嬉しくなった。と同時に、なんか裏があるような気がしてきた。


「セレン。もしかして……まだなんかあったりするのか?」


「さすが。勘が鋭い」


「やっぱりな。次はなんだ?」


「これについては、事前に相談をしておかなければならないから、急いで来た。世界だけじゃなくて、これからのグランオーリスにとっても重要な問題だから」


「うん……ん?」


 もったいぶった言い方はセレンらしくないな。


「あたしが魔法学園にいた理由。憶えてる?」


「ああ。留学だろ?」


「ちがう」


 表情は変わらないが、どことなく拗ねたような感じになるセレン。


「あーちょっと待て。思い出す」


 どうしてわざわざ王国に留学にきたのか。一国の王女が従者も連れず、不思議に思ったのを憶えている。

 えっと確か。


「あっ」


「思い出した?」


「結婚相手を探すためだったっけ」


 セレンは頷く。

 優秀な人材が集まってくる魔法学園で、将来の夫、つまりグランオーリスの王太子になる男を見つけて来いって両親に言われたんだったか。

 ヘリオス。あんた何やってんだよ。


「実を言うと、魔法学園に入学してすぐに候補は決まってた。というより内定してた」


「そうなのか? でもこう言っちゃなんだが、セレンってあんまり交友関係がある方じゃなかったよな? つるんでたの、俺くらいじゃないか?」


「そう。すぐに見つかったから他の人と親しくする必要がなかった」


「うん……うん」


 え?

 セレンは、じっと俺を見つめている。いつもの無表情ではあるのだが、そこはかとなく照れているというか、恥ずかしがっているのはわかる。わかりすぎるくらいわかる。


「俺か」


「そう」


「つまり、魔法学園ですでに俺に目をつけていたと。え、ぶっちゃけいつから?」


「クラス分け試験で一緒になった時」


「捨てられた神殿で?」


「そう」


 かなり最初の方やないかーい。

 そうだ。ヒーモの存在感がありすぎて気が付かなかったが、あの時セレンも一緒になっていたんだった。


「だから同じクラスで隣の席になった時、逃さないと決めた」


「そういやセレンの方から話しかけてくれたんだよな。懐かしい」


 今思えば、あれはセレンなりの精一杯のアピールだったんだろう。

 そう思うと、途端にセレンが可愛く思えてきた。いや、もちろんずっとかわいいとは思っていたんだけど、愛を感じるというか。


「ロマンチックですね」


 コーネリアが目をキラキラさせている。この女騎士は意外と乙女チックなんだよな。


「ふむ。それでセレン。本題は……」


 セレンはしばらく口を噤んで俯く。

 我慢して待っていると、意を決したように力強い目で俺を見据える。


「あたしと結婚して、グランオーリスの王になってほしい」


 まじかー!

 氷使いなのに、火の玉ストレートのプロポーズを放ってきたな。

 セレン恐るべし。

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