持論展開
「キミのことは聖女様から聞いた。幼馴染らしいじゃないか。彼女のことは、残念だった」
「死んだみたいに言うな。行方不明ってだけだ。必ず見つけ出すさ」
「やはりキミは、聖女様の恋人なのか? 話を聞いた時も思ったが、ただの幼馴染とは思えないんだ」
「あんたに関係あるのか?」
「あるさ。愛し合う男女ほど尊いものはない。キミ達に好感を持つか持たないかという意味で、キミにとっても無関係じゃないだろ? 聞くところによるとキミは、世界に自由と平和をもたらしたいと考えているらしいじゃないか。聖女様が熱弁していたよ」
「俺とエレノアが愛し合っていたら、支持してくれるってことか? 亜人連邦の王を?」
「ああ」
ネルランダーは即答した。
「正直なところ。人間とか亜人とか、そんなことはどうでもいい。それはハンコー共和国としてもそうだし、俺個人としてもそうだ。生き物にとって重要なのは、男か、女か。そうだろう? なぁロートス。キミなら同意してくれると思うんだが」
「否定はしない」
「だと思った。キミを一目見た時にちょっと感じるものがあってね。つまり、大きなおっぱいが好きでありながら、平均的なおっぱいや、つつましやかなおっぱいも同様に好いているという点だ。たしかに大きさも重要だが、もっと大切なのは形状の美しさであるということだろう」
「おっさん。いい歳して何言ってんの? 全面的に同意だけどさ」
「男は死ぬまで思春期の心を忘れないものさ」
この会話は、ネルランダーの話術なのだろう。おっぱいを話題に出すことで、雰囲気を和ませているんだろうな。かなりの策士だ。諸葛孔明を上回るかもしれない。
「キミは本当に世界を導くつもりかい?」
「それはみんなで決めればいい。そのための世界会議なんじゃないのか?」
「王女の提案が採決されなければどうする?」
「関係ないね。地位や立場がどうだろうと、やることは変わらない。それが使命ってもんだろ」
「……その通りだ」
ネルランダーは突然大笑いする。どうしたどうした。
「その言葉が聞けてよかった。やはり、実際に会って話をしてみないとわからないものだな」
「ほんの少し言葉をかわしただけじゃねーか」
「それでもわかるのさ。人を見る目がある奴にはね」
そういえば、テンフも同じようなことを言っていた。目から志を感じ取れるとかなんとか。
「よっと」
ネルランダーは跳ねるようにして立ち上がった。
「ハンコー共和国はキミを支持する。キミの指導の下であれば、世界は安泰だと信じるよ」
「え?」
それだけ言い残して、ネルランダーは颯爽と飛び去っていった。
支持するだって? 俺を?
なんか、大変なことになってきたな。




