ぶっこむボム
「以上が、私からお話しするこの世界の真実です」
アデライト先生は締めくくると、会場はしばし静寂に包まれた。
もはや騒がしくなることもない。国家主席達は隣席同士でひそひそと話し合っている。
耳をすませば、その会話がまざまざと聞こえてくる。
「これは、まことの話なのか?」
「にわかには信じられんが……しかし、このような場で虚言を弄するだろうか」
「このような場だからこそかもしれません」
「ああそうだ。今回の会議の決定如何で、今後の世界の趨勢が決まるのだから」
「だが……だが……こんなことを認めるわけにはいかんでしょ」
「たしかに……」
ふむ。
事実は事実。
認めるべきだとは思う。現実を認めないと、次の時代へ前進することはできないんだ。
首脳達がやんややんや言っている間に、アデライト先生はセレンの隣に着席する。
入れ替わりでセレンが立ち上がった。
「いま説明にあった通り、神は人を滅ぼそうとしている。その為の手段として、我々人類の分断を行っている。わかりにくく、紛然と、あたかもそれが正しいかのように。だから騙されてはいけない。私達は曇りなき眼で真実を見抜かなければならない。そうでないと、人は神に敗北し、滅びの道を辿ることになる。故に私は、全人類が平等に、手を取り合って生きる世界を目指すべきだと主張した」
会場の空気は再び冷え込んでいた。
そりゃそうだ。数百年、いや数千年間も信じてきた神が本当は人間の敵だったなんて、普通に考えてやばい。人類の歴史がひっくり返ってしまう。
いま先生がした話を信じられる人がどれくらいいるだろうか。
セレンの提案を受け入れる人がどれくらいいるだろうか。
「あ~。ちょっといいかな~?」
アルドリーゼが爆乳を揺らしながら、諸手を挙げた。
「手を取り合うっていっても、組織を作るならどうしてもまとめ役が必要になるよね~? それは誰がやるの~? セレン王女殿下かな~?」
うむ。
確かにそこは気になるところだ。
「そのつもりはないし、それについては妙案がある」
「なになに~?」
「魔王を倒した英雄のもとに、一致団結したいと思う。いかがか」
え?
「魔王を倒した英雄~?」
待って。聞いてない。
「王女様~。それは誰~?」
セレンは、会場の片隅で壁に持たれる俺を見た。
「ロートス・アルバレス」
会場中の視線が、俺に集まった。
うそ?
こんな話、マジで聞いてない。
「彼に、世界の舵を取ってもらおうと思う」
セレンはさも当然かのように、宣言した。




