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おさらいするんですね

「まず前置きとして、これから私が申し上げることは、神話でも仮説でもなく、実際に起こった事実であると認識して頂きたいと思います」


 先生が懐から杖を取り出し、一振りする。

 すると魔法によって、頭上に大きな画面が出現した。


「はるかなる昔、我々が住むこの世界には無がはびこっており、後世の人はそれを原初の世と名付けました。その無だけが存在する原初の世に、三人の女神が降臨したのです」


 画面に映し出されたのは、三分割された画像。それぞれ、どこか知らない地にある女神の像だった。


「万象の光マーテリア。法理の光ファルトゥール。そして生命の光エンディオーネ。彼女達はそれぞれが異なる力を持ち、その均衡をもってして、この世界を創造せしめました」


 アデライト先生の声が、場内に染みわたる。


「それから後、再び遥かなる時が流れると、世界に最初の生命が誕生した。マーテリアが耕した土壌に、エンディオーネが種を蒔き、ファルトゥールが恵みをもたらした。そうして更なる時を経た先、ついに知性ある生命が誕生した。かつて神の山に住み、この世界を統べた古代人です」


 会場の国家主席達は、みな一様に先生の言葉に耳を傾けていた。


「古代人は女神より与えられた権能を用い、世界に繁栄と平穏をもたらしました。その時すでに様々な亜人が生まれており、彼らは古代人と共に人生を謳歌していた」


 ほんの少し、場内がざわついた。


「そう。女神の時代、いわゆる神代において、古代人と亜人に貴賤はありませんでした。あったのは役割の違いであり、命の価値に上下などなかったのです」


 リュウケンが何かを言いたそうにしていたが、ヴィクトリア二世が目線でそれを制する。


「争いのない穏やかな世界。女神が人々に望んだ光景がそこにはあった。しかし、その平穏は長くは続きませんでした。ある時、とある亜人の種族が土地に境界を引き、囲いを作り、独占し始めた。王を戴き、作り出したヒエラルキーに各々を当てはめた。国家の誕生です」


 話は途端に不穏になる。


「その種族はノームと呼ばれる種族でした。彼らの特徴は、数の多さと多様性、そして真理ないし物質的なものへの飽くなき探求心。その欲は次第に増長し、いつしか取り返しのつかない傲慢へと変わっていった」


 ぱっと画面が切り替わり、現代に生きる様々な国の人間達が映し出された。

 そこかしこで唾を呑む声が聞こえる。


「ノームは強欲で排他的な種族でした。自らが古代人にとって代わり、この世界を支配しようと、他種族を攻撃し服従を強いた。先に申し上げておきましょう。いま私が取り上げたノームこそ、現代の世で人間と呼ばれる種族です」


 堰を切ったように、場内で怒号があがった。

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