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一日の内容が濃いんだよな

 といっても、決闘は明日の話だ。

 俺にはそんなものよりも重要なイベントがある。


「明日は、楽しみですね」


 ヒーモが用意した貴族寮の一室。

 大きなベッドの中、サラが笑顔でそう言った。


「楽しみか……不安しかないけどな。憂鬱だ」


「たしかにドキドキしますけど、ワクワクもしませんか?」


「まーな」


 サラが言っているのは、クラス発表の話だ。


「ベースクラスになってたらいいんだが」


 明日の朝に、新入生のクラス発表が行われる。はたしては俺はどのクラスに配属されるのか。これから三年間の運命やいかに。


 俺は隣で眠るサラを右腕で抱き、反対側のアイリスを左腕で抱き寄せる。

 なんと素晴らしい寝心地だろうか。

 両手に花とはまさにこの事よ。


「マスター。クラス発表も大切ですが、やはり明日の決闘も気掛かりです。ミスター・ダーメンズはあのように仰っていましたが、そう上手くいくものでしょうか?」


「具体的になにが気掛かりだ? お前の力なら、イキールを倒すことなんか簡単だろ?」


「それはそうなのですが……相手側も代理人を立ててこないとも限りません」


「イキールの性格でそれはないと思うけどな」


 あんなプライドの高そうな奴。どうせ自分で戦うだろう。ヒーモみたいな腰抜けとは違う。


「だといいのですが……」


 結果として、アイリスのこの危惧は現実のものとなる。

 俺は自身の考えの甘さを、思い知ることになるのだ。


 どういった形でそれが表れたか。

 思いがけないことだった。


 この翌日。決闘の場に現れたのは、イキール本人でも、奴の従者でもない。


 エレノアだったのだ。


 だがまずは、そこに至るまでの過程から追っていこう。


 俺達が眠りについてから、朝が訪れ、クラス発表の会場に赴いてからの話である。


 この日は生憎の雨だった。

 土砂降りというほどではないが、傘がないと厳しいくらいの降水量。


 クラス発表は講堂前の広場で行われた。試験が始まったのと同じところだ。

 会場にはすでに新入生たちが集まっている。数百の傘が並ぶ光景は、正直うっとうしい。


「サラ、アイリス。寒くないか?」


「平気です、ご主人様」


「わたくしも、大事ありませんわ」


 いま、一本の傘に三人入った状態だ。体を密着をさせてやっと濡れぬか濡れないか。

 俺は二人の従者の柔らかさの方が大切だから、雨なんかどうでもいいけどな。


「みなさーん! おはよーございまーす!」


 ステージの上に傘を差したアデライト先生が登場した。新入生たちの視線が先生に集まる。

 彼女は眼鏡をくいっと上げると、早速ステージ上のスクリーンを起動する。何度見ても魔法ってすごいな。空中に映像が浮かび上がるんだから。科学で言うところのホログラフィックってやつみたいだ。


「昨日は試験お疲れさまでした。皆さんゆっくり休めましたか? しっかり前日の疲れを取っておくのも、この学園で学ぶ上で大切なことですよ」


 取れてないな。色々ありすぎてな。まぁそれは仕方ないだろう。昨日みたいにたくさんの面倒ごとが起きるなんて、滅多にないだろう。そうに違いない。


「では、皆さんお待ちかね! クラス発表の時間でーす!」


 会場はにわかに騒然となった。


 さて、どうなることやら。

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