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倍返しだ

 なにげにまともな戦いは初めてだ。


 俺はクソスキルの集合体と言っても過言ではないが、ここいらで少しは戦えるんだってとこを見せておかないとな。サラとアイリスの手前、主人としての威厳も保つためにも。


「愚かな平民どもが……ワシが冥土へ送ってやるぞ!」


 たかが門番が何を言ってやがる。


「マスター。まずはわたくしが牽制を。敵の隙を作ります」


「アイリス。頼むぞ」


 彼女は口元に微笑みを浮かべて頷くと、ゆったりとした動きで門番の前に歩みを進める。


「最初に死にたいのは貴様か! 女ぁッ!」


 アイリス目掛けて、大斧が振り下ろされる。凄まじい重量だろう。大丈夫なのか?


「おお」


 多少心配だったが、どうやら杞憂だったようだ。


 力一杯振り下ろされた大斧を、アイリスは片手で楽に止めていた。刃の部分を掌で掴むように受け止めている。


 え、すごい。


「えいっ」


 そしてアイリスは、門番の頬にビンタを打ち込んだ。


「ぶべッ――」


 おかしな声をあげて、門番は華麗にふっとんだ。


 それはもうびっくりするくらいの勢いで。


 きりもみ回転をしながら高く舞い上がり、門を越えて十数メートルほど吹き飛び、地面に叩きつけられて何度かバウンドした。


「おいアイリス……あれ、殺してないよな?」


「もちろんですとも。たぶん」


「えぇ……」


「ご主人様、ボクの魔法で追い打ちをかけますか?」


「やめろ」


 そんなことしたら、ほんとに死んでしまうだろう。俺は人を殺すことなんか望んじゃいない。


「しかしマスター。あの門番はわたくし達の命を奪おうとしてきたのです。殺そうとする者は、自らが返り討ちにあっても文句は言えない。それが世の不文律ではありませんか」


「操られていたとしてもか?」


「それは……」


 アイリスは言い淀む。


 確かに彼女の言うことはもっともだ。この世界において、人を殺そうとするものは逆に殺されたとて仕方ない。身を守るために殺す行為は罪ではないのだ。


 転生前なら過剰防衛ともとられるかもしれないが、この国ではそんな概念はない。


「この場合、俺達の命を狙ったのはアカネということになるんだろうな」


「ご主人様、でもそれじゃあ」


「わかってる」


 普通に考えれば、アカネに対して報復するのが筋ってもんだろう。しかしそれは、ダーメンズ家を敵に回すことになるし、そもそもアカネに敵うとも思えない。

 故にサラとアイリスは、あの門番をどうにかすることで手打ちにしようとしたのだろう。


「この世界のルールがどうであろうと、俺は無益は殺生はしない。やられたらやりかえすなんていうのは、正直クソくらえだ」


 現代日本人的な感覚が根強く残っている俺としては、ハナから人を殺すなんて発想がない。そりゃ無力化するために殴ったりおっぱいを触ったりはするが、さすがに人殺しはどうかと思う。俺の中で譲れない線引きみたいなものが、確かにあるのだ。


「ご主人様……心が広すぎます。ボク、感動しました!」


 なんかサラが目を輝かせているが、そんなに大層な事言ったか?


「このアイリスも感服いたしましたわ。マスターの寛大さには、この王国の誰であろうと及びません」


 大袈裟だ。


「お世辞はいい。それより中に入るぞ。文句の一つくらいは言ってやらないとな」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] それいじめられる奴じゃん。過剰がダメでも相応にはやり返さないとダメなのは人間も動物だってことだよ
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