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あ~再会するんじゃ~

「あ……!」


 頭痛がマシになったのか、顔を上げたウィッキーは俺の存在に気付いた。

 その顔色はみるみるうちに青くなり、明らかに恐怖に染まっていく。


「変態強姦魔……!」


「誰が変態強姦魔だ」


 一瞬ちょっとかっこよく思ってしまった俺はどうかしている。


 しかしながら善良な市民である俺をそんな風に呼ぶような女は許せん。


「だって……ウチのむ、胸をさわったっす! いや、さわったどころじゃないっす! あんな乱暴に揉みしだいて……女の敵! もうお嫁にいけないっすー!」


 なにやら喚いているが、俺からすれば笑止千万。


「殺し屋のくせに、甘ったれたことを言うな」


 俺はぴしゃりと言ってやった。かなり強く言い切ったせいか、部屋はしんと静まりかえる。


「お前はヘッケラー機関の刺客として先生の命を狙いにきた。加えて、無関係の俺に『ツクヨミ』とかいうスキルを使ったな。たまたま無効化できたからいいものの、一歩間違えれば俺は廃人になっていたし、アデライト先生だって怪我をしていたかもしれないんだ」


 俺の語気は次第に強くなっていく。腹の底から沸き立つような怒りの感情が抑えられなかった。


「いいか? お前はそれくらいのことをしたんだ。人を壊し、殺そうとしたんだぞ。それに比べたら、おっぱいを揉まれたくらいなんだ。そんなことでピーピー鳴くんじゃねぇ。それくらいの覚悟もないならよ、刺客なんざ今すぐやめちまえ!」


 言ってやった。反論の余地すらない非の打ちどころのない正論。


 人を襲っていいのは、おっぱいを揉まれる覚悟のある奴だけなのだ。


 しばし、救護室は静寂に包まれた。

 アデライト先生もウィッキーも、何も言おうとしない。ただ驚いた様子で、じっと俺の顔を見つめている。


「ロートスさんあなた……」


 先生が何かを言いかけた時、部屋に嗚咽が響き始めた。


 いつの間にかウィッキーが、ぼろぼろと大粒の涙を流していた。


「うわぁん! ごめんなさいっす~!」


 それからは大変だった。まるで赤子のように盛大に泣きじゃくるウィッキーを、先生が抱きしめて宥めようとする。

 俺は何も言わなかった。もはや口にすることはない。


 ウィッキーが自身の罪を自覚したのならば、それでいいのだ。


 しばらく泣きじゃくった後、ウィッキーは泣き腫らした目で俺を見上げた。


「あんたの、言う通りっす……。ウチは……ウチはとんでもないことをしようとしてたっす」


 袖で涙を拭い、許しを乞うような視線を俺に向けてくる。


「でも仕方がなかったんす。組織に逆らうことはできない。裏切り者には死あるのみ。それがヘッケラー機関の鉄の掟っすから……それに、ウチには守るべきものが――」


 その時であった。


 救護室の扉が勢いよく開かれる。

 現れたのは息を切らしたサラ。そしてアイリス。


 ベッドの上のウィッキーを見るなり、サラがその幼い目を大きく見開いた。


「おねえちゃん……!」


 その一言は、俺に極大の衝撃を与えた。

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