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完全に瘴気を克服しました

「うぉ――」


 キーウィは反応すらできない。

 漆黒に染まった岩石は、奴の左腕を奪う。二の腕から先が一瞬にして消滅していた。


「あ……オ、オラの腕が……オラの腕があァッ!」


 まるで子どものような甲高い叫び声をあげるキーウィ。

 大のおっさんが情けない。


「なるほど。そういうことか。お前の力は、投石だけにしか反映されないみたいだな」


 理を越える力には大きな制約がある。俺だったら、明確にイメージできることしか実現しないし、ハラシーフなら一対一の決闘という場面でしか自身を強化できない。

 キーウィについては、投石という技術ただ一点に限定されているんだろう。だから、攻撃力はあっても、防御はからっきし。

 俺の操る完成された瘴気を、相殺することはできても防ぐことはできない。


「いたいー! いたいんじゃー!」


「うるさ」


 キーウィは獣の上でバタバタしている。


「このクソヤロー! よくもオラの腕を……!」


「腕一本で済んだことを感謝しろよ。腕じゃなくて頭をぶっ飛ばしてもよかったんだぜ」


「ボケが!」


 激昂するキーウィだが、その下の獣はすっかり怯えてしまっている。俺との力の差を本能で感じ取ったのだろう。人間よりよほど利口だ。


 上空から接近の気配。アイリスか。

 突風を伴って降下してきたアイリスは、俺の隣にずしんと着地した。


「お見事です。ロートス」


 コーネリアが賞賛の言葉をかけてくれた。えっへん。

 そして、アイリスの背中に立つセレンが、じっとキーウィを見据えていた。


「オ、オメー! やっぱ瘴気を武器にしてやがったんだな! 言い逃れできねーんじゃこりゃーよぉ!」


「邪推はやめて」


 セレンは堂々と言い放った。


「彼は瘴気に侵されながらも、それを克服して生きる力に変えた初めての人物。彼の存在は、瘴気に立ち向かう世界に希望を与える」


「なに都合のいいこと言ってんじゃ! 瘴気はただの毒じゃ! それを操るなんて、魔人共と同じじゃねーか!」


 喚くキーウィの左腕は、すでに俺の瘴気に侵されている。出血はしていない代わりに、傷口が黒く染まっているのだ。こいつに対しては、俺がそうなるよう仕向けた。瘴気に侵される苦しみを知ってもらいたかったからな。

 セレンは小さく首を振った。これ以上話をしても無駄だと悟ったらしい。


「あなたを捕らえる。どんな理由でも、国境を侵犯した罪は重い」


 セレンの視線を受け、俺は頷いた。

 その瞬間、俺はほとんど瞬間移動のような動きでキーウィの顎をパンチし、一瞬にしてダウンさせた。瘴気による身体強化の賜物だ。

 キーウィが倒れると、獣も脚を折ってうずくまった。降伏しているようだ。

 この場にいるマッサ・ニャラブ軍は、一人残らず全員無力化した。これで一段落だな。


「これを一人で……凄まじいですね」


 大地がめくれ上がり、兵士達が転がる戦場を見渡すコーネリア。


「そうだろ。俺ってすごいだろ」


「すごい」


 セレンが賛成してくれた。

 ともかく、グランオーリス侵略の危機は去った。

 遅れてやってきた冒険者たちが、マッサ・ニャラブの兵士達を拘束するのを背に、俺はメインガンの亜人街へと戻るのだった。

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