表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
591/1001

倍返しだ

「う、うわぁ! なんだこれは!」


「禍々しいにもほどがあるッ!」


「た、助けてくれお!」


 兵士達は為す術もなく、漆黒の大津波に呑み込まれていく。

 莫大な瘴気の奔流に、どんな魔法も、スキルも、役に立たない。俺のヘヴンズフォール・コラプションは、すべてを無効化していく。


「なんじゃコレー!」


 ただ一人、キーウィの投石だけが瘴気に対抗することができていた。

 しかし、それで兵達を守れるわけじゃない。

 十数秒にわたって広がった瘴気の大津波は、マッサ・ニャラブ軍を壊滅させると、そのまま虚空へと溶けていった。

 後には、荒れ果てた大地と、そこに横たわる無数の兵士達だけが残る。


「し、信じらねぇーって。ウソじゃこんなん」


 残念だが、真実だ。

 立っているのは、キーウィと、奴が跨る獣だけだった。


「安心しろ。誰も死んじゃいない」


 俺は呟く。


「お前達にも家族がいるだろう。その人達を悲しませるような真似はしたくない」


 この期に及んで甘いかもしれないが、偽りない本心だ。殺さずに無力化できるなら、それが一番いいだろう。


「こいつらの目が覚めたら、さっさと撤退しろ」


「ぐ、グヌヌ」


 キーウィは肩を震わせて口惜しさを耐えているようだ。


 ふむ。

 やっぱりこいつは防ぎ切ったか。

 ヘヴンズフォール・コラプションは、俺の中に溜め込まれた瘴気のすべてを解放をして撃ち出した、いわば超必殺技だった。

 瘴気は女神マーテリアの力だ。それを無傷でやりすごすなんて、改めて、人の秘めたる力には驚かされる。

 神が人を恐れ、その力を奪ったことにも納得せざるを得ない。


 ところで、ヘヴンズフォール・コラプションって技名はかなりかっこいい気がする。

 ヘリコプター斬りと並んでお洒落な技名トップスリーにランクインしそうだ。


「今のでホントに確信したんじゃ。やっぱグランオーリスは瘴気を生み出した極悪国家じゃとよ」


「呆れるな。短絡的すぎるぜ。俺だって瘴気の被害者だっつーの」


「瘴気を完璧にコントロールしておいて何を言うんじゃ。あれだけの威力をだしながら、さらに命を奪わないように加減までするなんてよぉ。ただの人間ができる芸当じゃねーんじゃ」


 あっそ。


「とにかく。もう終わりだ。とっとと国へ帰れよ」


「いーやまだじゃあ」


 だしぬけに、キーウィの投石が俺に迫った。

 もうええって。


 飛来した投石を、俺は瘴気を纏わせた腕で受け止める。強い。しっかり踏ん張って止めなくてはならないほどの威力だった。


「なんじゃと! すべてを打ち砕く勇者の魔弾が……! ありえないんじゃ!」


「理の枠を外れてんのは、なにもお前だけじゃないんだよ」


 俺は受け止めた岩石に瘴気を纏わせ、投げ返してやる。


「え」


 投げた俺自身がびっくりするほどの勢いで、岩石は飛んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ