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裏目に出るって最高にクソ

 かなりの距離をぶっ飛ばされた俺は、マッサ・ニャラブ軍に突っ込んで、結果的に陣形を崩すことに成功する。


「痛ってぇ」


 結構なダメージを食らっちまった。頭がクラクラする。視界もちょっと揺れていた。

 だが、すぐさま立ち上がって再突撃をかます。


「あいつは、放っておけねーな」


 この俺にこれほどのダメージを与えるなんて、普通じゃない。

 再び敵の指揮官と対峙する。今度はむやみに突っ込まず、適度に距離を置いて剣を構えた。


「マッサ・ニャラブ軍の将軍だな?」


 豪華なおっさんは、俺の質問を受けて愉快そうに笑った。


「オラを前にして将軍とは見くびられたもんじゃ」


「なに?」


「オラこそはフルツ族の王。キーウィじゃ」


「王だって? そいつぁ、大物じゃねぇか」


 そこで、俺の隣にエンペラードラゴンが舞い降りてくる。アイリスだ。その上にはセレンとコーネリアがカッコいい立ち姿を見せている。

 周囲のマッサ・ニャラブ兵達は騒然となった。


「エ、エンペラードラゴンだ……!」


「バカな! どうしてこんなところに!」


「慌てるな! 王がおられるのだ! 恐れることはない!」


 そうは言いながら、攻撃してくる気配はない。王の命令がないせいか、兵士達は様子見のようだ。


「はじめまして、フルツの王。あたしはグランオーリスの王女セレン・オーリス」


 厳とした態度で一礼するセレン。

 キーウィは一瞬だけ驚いたように目を見開き、それから大きく笑いをあげた。


「なんとなんと! 王女殿下が自ら出張ってこられるっつーのか。これは傑作じゃあ」


 アイリスに乗ったセレンと、巨大な獣に跨るキーウィ。目線の高さはほぼ同じだ。


「あなた方は我が国の領土を侵犯している。速やかに戦闘行為を中止し、軍を退くことを要求する」


「んなことは無理な相談じゃ。大義はオラ達にあんだ」


 は? ふざけんな。


「大義だと? いきなり戦争しかけといて馬鹿げたことを言うんじゃねぇぞ」


「オメーはわかってないんじゃ。グランオーリス王こそが、世界を瘴気で満たした張本人なんじゃ。オラ達は、グランオーリス王から世界を救うために正義の戦いを開始したんだわ」


「何を根拠にそんなことを」


「んじゃな。オラも今の今まで半信半疑だったじゃ。議会で決定した戦争だから、戦いに秀でたオラ達フルツ族が軍を率いてきただけ。けどよー、オメーみてぇな奴がグランオーリスについている時点で、今まさに、確信に変わぁたんじゃ」


「なんだと?」


「その姿で何の言い逃れをするつもりだ? まるで瘴気の権化だぞ?」


 俺は愕然とした。

 まさか俺のこの特異体質が、グランオーリスを窮地に追いやることになるのだと。

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