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二度目の約束

「やっぱり、辛いっすか。世界に認識されないってのは」


 俺の顔を見て、ウィッキーは眉尻を下げている。


「はは。なんだよ。もしかして同情してくれてんのか?」


「茶化すなっす。ウチだって、人を心配する気持ちくらいあるっすよ」


「……べつに。関係ない奴に忘れられてもなんとも思わないさ」


 これは強がりではなく、紛れもない本心である。


「だったら、どうしてそんな辛そうな顔をしてるっすか」


 こりゃ参ったな。俺は今、そんな顔をしているのか。


「俺は、お前に忘れられてるってことが苦しいだけだ」


「……なんすかそれ」


「あの時あったはずのお前の想いが、今はもう感じられない。それが、なんか……な」


 こうしてゆっくりしていると、目の前の忙しさに追われ忘れていた侘しさがこみ上げてくる。

 大切な人に忘れられてしまうことは、なにより悲しい。今まで自分が積み上げてきた全てを否定されているようで。


「ロートス」


 ウィッキーの沈痛な表情が俺を見ている。俺ははっとした。


「いやすまん。別にお前を責めようってわけじゃない。お前が負担に感じる必要はないんだ。俺はただ……ああくそ、こんな話をするつもりじゃなかったんだけどな」


「ロートス」


 立ち上がりこちらに歩み寄ったウィッキーは、俺の前にしゃがんで手を握ってくれる。


「人は誰もが胸の中に苦しみを抱えているっす。ウチだって、故郷を失くして、奴隷になって、サラと離れ離れになって、殺し屋なんかさせられて……それでも今は、亜人のため、世界のため、前を向いて生きてるっす。どうしてそうなれたのかは、もう忘れちゃったっすけど」


 握った手に、力がこもる。


「あんたがウチを救ってくれた男だって言うんなら、それを憶えてなくても、今度はウチがあんたの力になりたいっす。だから、ウチに忘れられたことが寂しいって言うのなら……ちゃんと思い出させてくれっす」


「ウィッキー」


「そしたら、ちゃんとロートスのことを思い出したら、胸くらいいくらでも触らせてあげるっすよ」


「……言ったな」


 ウィッキーの言葉、そして瞳には、成熟した優しさと、いつか見た想いの欠片が宿っている。

 俺は唇をぎゅっと引き結び、それから小さく笑いを漏らした。


「今度は、忘れるなよ」


 ニカっと笑うウィッキーは、やはり二年前よりもずっと大人びて見えた。

 こいつも、俺の知らないところで大人になっている。人として大きくなってる。

 だったら、俺も負けちゃいられないだろ。愛想尽かされでもしたら、堪ったもんじゃない。


 俺は男だ。

 男は勝ってなんぼだろ。

 もし今の状態が、俺の行いが招いた結果だとしても。

 そんな運命に負けるつもりはない。必ず勝って見せるさ。


 そして、思う存分ウィッキーのおっぱいを揉みまくる。

 必ずな。

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