タイムボーナス獲得
「じゃあ俺は、別に瘴気に染まりきっても死なないってことか?」
「その通りっす。だけど、他に何が起こるのかはわからないっす……もしかしたら、とんでもないことが起こるかもしれないっす」
「はは。脅かすなよ」
「笑い事じゃないっすよ」
ウィッキーはどこまでも真剣だ。
「とにかく、しばらくはここで検査を受けてほしいっす」
「しばらくってどれくらいだ」
「あんたの正体が解明されるまでっす」
正体って。まぁ、そんなことは俺自身にもわからないから、仕方ないことかもしれない。
「だが、俺にはやることがある。神の山にもいかにゃならんし」
「タイムリミットはなくなったんすから、急ぐことはないっす」
そうだけど、これは気持ちの問題だろう。
一刻も早く世界を救いたいんだ。今この瞬間にも苦しんでいる人が大勢いるのだから。
「気持ちはわかるっすけど、焦ったって良いことは何もないっすよ」
諭された。
たしかに、以前神の山に行った時は、準備不足のせいでえらい目にあった。現在進行形でその傷痕に苦悩しているし。同じ過ちは二度繰り返すのはバカか。
「そうだな。なら、ちょっとの間ここで世話になる」
「うん。それでいいっす」
にこりと笑んだウィッキーに、俺は不覚にもときめいてしまった。おっぱい触らせろ。
それはともかく。
以前、俺を神の山に行かせたのは、グランオーリスのギルド長であるルクレツィア・カイドだった。あのクソデカイおばさんだ。
そのせいで俺はマーテリアと遭遇し、元の世界に返され、挙句の果てにはこの世界から忘れられてしまった。
果たしてあれは偶然だったのだろうか。今となっては、あのギルド長が疑わしい。
神の山にはあいつの娘を名乗るアンという子もいたし。当時は疑問に思わなかったが、偶然にしてはできすぎている。
まさか、全て仕組まれたことだったのか?
いや、考えすぎかもしれない。
でも、考えすぎじゃないかもしれない。
だが警戒しておくに越したことはないだろう。機会があれば、ギルド長を問い詰めてやってもいい。そうしよう。
そんな時だった。
俺のポケットが振動する。
「おわ」
念話灯の着信。誰からだ。
「もしもし」
『ロートス。僕だ』
「ヒューズ?」
『ああ。今、時間あるかい?』
「ある。どうした」
『聖女の件、報告しておこうと思ってね』
「エレノアか」
待ってました。
俺の中でずっとモヤモヤしていたんだよな。エレノアについては。あいつは今どうしているだろうか。
『聖ファナティック教会には、聖女宮と呼ばれる場所がある。聖女エレノアが現れてから造られた新築の建物だ』




