ローシュツ・アルバレス
よくわからないゴチャゴチャした機械がたくさん並んでいる薄暗い部屋。
それがウィッキーの研究室だった。
「悪いっすね。こんなところで。応接室は倉庫になってるんすよ」
「気にしない」
「ありがたいっす」
俺とアイリスは隅っこにあるソファに腰掛ける。
ウィッキーはデスクへとついた。
「どこから話をしたらいい?」
「そっすねー。どうしてあんたとアイリスが、王女と一緒にここに来たのか。ってところからっすか」
ふむ。
たしかにそこは疑問に思うところか。
俺は今までの経緯をざっくりと説明する。
神の山を目指してグランオーリスに入ったところ、セレンが襲われているところに出くわしたこと。
騎士団が崩壊し、護衛としてセレンについてきたこと。
そして、これからセレンを連れて神の山に赴くことと、その理由。
「なるほどなるほど。だいたい理解したっす」
「話がはやいな」
「まぁ、あんたの事情についてはサラや先輩から聞いてるっすからねー。まさかここに来るとは思ってなかったすけど」
「俺も、まさかこんなところにお前がいるとは驚きだ。アイリスは知ってたのか?」
「いいえ。わたくしも存じ上げませんでしたわ。ウィッキーの居場所は、サラちゃんとアデライト先生だけが知っていたのでしょう。おそらく、意図的に隠されていたのでは?」
「正解っすー。ま、いつまでも先輩に匿ってもらうわけにもいかなかったっす。今の王国は、亜人が暮らすには大変すぎるっすから」
たしかに、アデライト先生みたいに姿を変えられるなら別なんだけどな。
「それで、セレンの伝手でこの街に?」
「そういうことっす。やー、あの子がこの国の王女様で助かったすよ。学園で魔法を教えた縁が、こんなところに繋がるなんて、人生は不思議っす」
俺のおかげだな。
セレンにウィッキーを紹介したのは俺だから。
完全に、俺のおかげだ。
「ところでロートス。ひとつ頼みがあるんすけど、聞いてくれるっすか?」
「ん? なんだ?」
「あんたの身体を、調べさせてほしいっす」
「パンツを脱げってことか?」
「なんで下半身限定なんすか。ちょっ、脱がなくていいっすからっ!」
ズボンをパンツごとずり下げようとした俺に、ウィッキーの荒い声が降りかかった。
顔を背け、突き出した両手をバタバタさせるウィッキー。
「ジョークだよ。ロートス・ジョークだ」
「そんなジョークいらないっすよまったく」
いやはや。
「そんで? 調べるってのは、瘴気のなんやかんやか?」
「あー……そうっす。瘴気に侵されながら普通に生きていられるって、稀有な例なんすよ。いや、稀有っていうより初めてのケースっすね」
「時間のかかることだったらあれだけどな」
「そこまで時間は取らせないっす。一日程度あれば」
ふむ。どうしたものか。




