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モブ兵士くん

 メインガンに到着したのは、陽が傾きかけた頃だ。

 セレン達と合流してから数日経っていることを考えると、ここまで来るのに割と時間を食ったことになる。

 俺が瘴気に侵され尽くされてしまうまで、あとどれくらいか。痣の進行を考えると一刻の猶予もなさそうだ。

 まぁ、今は目の前のことに集中するけどな。


 城壁に囲まれたメインガンの街は、近くで見るとかなりの威圧感だ。

 有事の際には軍事拠点になるというのも頷ける。

 俺達は閉鎖された城門の前で、守衛の兵士と挨拶を交わす。


「王女殿下……? それに、そちらはエライアの騎士団長ですか。これは一体?」


 セレンの姿を見とめた兵士は、供がたった三人しかいないことに困惑しているようだった。騎士団が護衛についているという話が通っていたんだろう。

 兵士の表情が引き攣る。最悪の事態を思い浮かべたようだ。


「道中、何度もモンスターの襲撃に遭った。騎士団は壊滅。冒険者達も命を落とした」


 セレンの淡々とした受け答えに、兵士が青ざめる。


「それは、なんと申し上げればよいのか……とにかく、ご無事でなによりです」


「この二人のおかげ」


 セレンは俺とアイリスを一瞥する。


「王国から来た冒険者」


「なんと。王国の」


 それを聞いた兵士は、俺とアイリスに向かって深く頭を垂れた。


「王女殿下をお守り下さり、感謝いたします」


「いや、とんでもない」


 この兵士はだいたい十代半ばくらいだろうか。

 俺やセレンと同じくらいだ。

 それなのにすごく礼儀正しいなぁ。


 この世界でも十代半ばってのはちょっと尖っている奴が多い。現代日本と同じく。俺もそうだしな。

 同じ歳くらいの俺にここまで礼儀正しくしてくれるなんて、できた人間だ。


「殿下、少々お待ちください。上層までの案内を呼んでまいります」


「待て、その必要はない」


 コーネリアが兵士を制し、次に身を寄せて耳打ちをした。


「殿下と我々は下層に向かう。わかるな?」


「……はっ」


 かしこまった兵士は、敬礼をして門に手を向けた。


「開門!」


 合図と同時に、鉄の城門が音を立てて開かれていく。


「どうぞお通り下さい」


 俺達は門をくぐる。すると、再び門が閉じられた。

 門が常時開放されていないことを見るに、この街の警備はかなり厳重なようだ。

 まぁ、今この国はモンスターの脅威に脅かされているから、どの街でも同じようなものか。

 グランオーリスだけじゃないな。大なり小なり、世界中が瘴気に侵されたモンスターの脅威に怯えている。そんな感じの雰囲気がする。


 なかなか辛い現状だ。

 この世界を救えるのは俺しかいない。

 たとえそうじゃなくても、そういう気持ちでいることが重要だ。

 速いとこセレンの用事を済ませて、神の山に行き、瘴気の根源を断つとするか。

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