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どうなるものかな

「あんたは知ってる知ってるって言ってるけど、本当にそうか? セレンの本意をわかってるのか?」


 俺も説教くさいことは言いたかないが、言うべき時に言うべきことを言わないのは事なかれ主義の日和見主義者でしかない。


「セレンがわざと騎士達を見殺しにしたのは事実だ。それはあんたの言う臣下を切り捨てることとは違うのかよ?」


 俯いていたコーネリアが顔を上げ、セレンを見る。その碧眼にはすこしばかり驚愕の色がある。


「本当に?」


 セレンは否定しない。


「どうして……?」


 そして答えもしない。


「コーネリア。あんたはセレンに一番近いところにいるってのに、こいつの心をちっともわかってねぇ。そりゃ騎士達に弁明なんかできるわけもねーわな」


「っ……では、あなたは理解しているというのですかっ。殿下のお心を!」


「少なくとも、あんたやボンクラな騎士どもよりかは理解してるさ」


 正直、俺だって未熟な半端者だ。腑に落ちなかったり納得できない部分もある。けど、俺は俺なりにちゃんとセレンの心を理解しているつもりだ。その葛藤や、割り切れない罪悪感も含めて。


「お前ら騎士はさ、そりゃ形の上じゃセレンや王様に従って仕事をするって感じかもしれないけどよ。それがすべてだと考えちゃ駄目だろ」


「私たち騎士は主君を守るために盾を構え、主の敵を討つために剣を振るいます。それこそが騎士のあるべき姿でしょう」


「いいや、違うね」


「何が違うのですっ」


「真の騎士を名乗るなら、主君と同じこころざしを保たなくちゃならない」


「同じ……こころざし?」


「ああそうだ」


 俺はいつかアデライト先生に聞いた話を思い出しながら、自分の言葉を吟味する。


「それがセレンがお前らに求める主従の姿ってわけだ」


「……殿下」


 コーネリアの視線を、セレンは真正面から受け止める。ただ、口は開かない。


 しばらく思索に耽ったコーネリアは、ふと立ち上がる。

 がしゃりと、鎧が鳴った。


「もう一度、皆のところに行ってきます」


 青い瞳に、かがり火の赤が映りこんでいる。

 敬礼をして身を翻したコーネリアは、足早にその場を去っていった。

 その背中を見送る俺達の間に、しばし言葉はなかった。


「マスター」


 アイリスの柔らかい声。


「お姫様と同じこころざしとは、どのようなものでしょうか?」


「そうだな……なんつーか。まぁつまるところ、王と同じ側に立つってことだ」


「王と、同じ」


「主君を守るんじゃなく、主君と共に国と民を守る。その使命感、責任感ってやつを持つってことだよ」


 コーネリアは、それに気が付いたようだった。

 彼女はずっと近くでセレンを見てきたはずだ。だから、ちょっとのヒントで十分だっただろう。

 あとは、コーネリア次第だな。

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