目には目を
「余が、ジェルドの女王アルドリーゼであ~る!」
子どもを腕に抱き、戦車の上に立つ。
相変わらずのナイスバディだ。おっぱいは非常に大きいし、お尻も非常に大きい。それでいて腰はきゅっとくびれている。ボンキュッボンとはこの女の為にある格言だろう。露出度の高い衣装がエロスを強調しているのがまことによい。
それはともかく。
「そこなハンサム君~。見たところ人間のようだけど、亜人連邦の使者とはどういうことかな~。亜人が人間を使者に立てるなんて、信じられないんだけど~」
「だろうな。だが信じてもらうしかない。後ろに盟主がいるのが証拠にならないか?」
「ん~」
アルドリーゼは目陰をつくり目を凝らす。
「たしかにありゃ盟主のサラちんだね~」
「信じてくれるか?」
「ま~いいよ~。とりあえずは~。よっこらせっと」
戦車の縁に腰をおろすアルドリーゼ。
「余たちはね~。瘴気の雲を見つけて駆けつけたんだよ~」
「あれか。呪いを受けたヴォーパル・パルヴァレートが発生させてた」
「そ~そ~。それがメリーディエスで忽然と消えちゃったからさ~。何事かと思ってきたってわけ~」
「国境を侵犯してまでか?」
「何言ってんのさ~。うちと連邦の国境なんてあってないようなもんでしょ~」
政治的なあれこれはわからん。向こうがそういう認識ならそれを咎めても仕方ないかもしれない。
「あのヴォーパル・パルヴァレートは俺がぶっ殺した。瘴気の雲も、今はこの腕の中だ」
言いつつ、俺は痣だらけの右腕を見せつける。
そこで初めて、静かだったジェルド族がざわつき始めた。
「うっそ~。まじで~」
アルドリーゼも驚いている。
「あれを倒しちゃったの~?」
「倒した」
「どうやって~? あれにはスキルも魔法も効かないはずなんだけど~」
「普通に倒したけど……それよりおい、スキルも魔法も効かないってどういうことだ」
「あれ~? 知らない~? 瘴気を纏ったモンスターには効かないでしょ~? だから物理的な攻撃で倒すしかないんだけど~。渓谷の神は肉弾戦だってとてつもないからね~。肉体強化系のスキルや魔法でも、追い付かないくらいに~」
ふむ。直接効果をぶつけるようなスキル、魔法は効かない。自身の能力を強化するものでも、そもそもヴォーパル・パルヴァレートは強いし瘴気でさらにやばくなっている。だから倒せない。そういうことだと。
なるほど。だからここまでの大軍を率いてきたのか。数で押すしかないってところだな。
「俺はすごい鍛えてるし、この腕の呪いのせいで瘴気を纏った攻撃を放てた。それが勝因だろうよ」
「ふ~ん。瘴気には瘴気ってわけね~。一理ある~」
アルドリーゼは戦車の上で長い脚を組み、腕の中の赤ん坊をよしよしする。
「子どもが生まれたのか? めでたいことだとは思うが、自分の子を戦いに連れてくるのはどうなんだ」
「あはは~。この子は特別なんだよ~。次期ジェルドの女王候補ってね~」
なんだと。
「それに~。この子は余が産んだんじゃなくて~、従姉妹の子なんだよ~」
「そうなのか……ん?」
アルドリーゼの従姉妹って誰だっけ。なんか前に聞いたような気がするな。




