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勘違いも甚だしいんだぜ

 俺はアイリスの手を取り、建物の陰に隠れる。


「マスター?」


「しっ。隠れて様子を見るぞ」


「あの女性って、森でわたくしと戦った方ですか?」


「ああそうだ。フレイムボルト・レインストームをお前にぶち込んでただろ」


「はい。痛くも痒くもありませんでした」


 それは大したもんだ。けど今はどうでもいい。

 俺はサラとエレノアを覗き、聞き耳を立てる。


「あなたでしょう? 強欲の森林で私達を助けてくれたの」


「え……えっと。だから、人違いですと……」


「正体を隠しているの? 助けておいてお礼もさせてくれないなんて、ちょっとずるいと思うわ」


 ふむ? 一体どういうことだ?


「おいエレノア。ホントにこいつなのか? あたしの記憶じゃ、こんなちんちくりんじゃなくて、もうちょっと背の高い奴だったように思うが」


 エレノアの後ろに立つマホさんが、腕を組んでそんなことを言った。

 サラの頬がぷくっと膨らむ。


「ちんちくりんって……ボクだってレディなんですから、そんな言い方はよしてください」


「マホさん、失礼でしょう。私達の命の恩人なのよ。それにこの子がいなかったらメダルだって手に入らなかったんだし」


「んなこと言ってもなぁ。人違いだったら元も子もねぇだろ」


「いーえ! 私憶えてるもの。ねぇそうでしょ? あなたのそのローブ。他にそんないい物を着てる新入生はいなかったし、見間違えるはずないわ」


「それは……えっと、話せば長くなる事情があってですね」


 なるほどなるほど。だんだん話が読めてきたぞ。


 俺がサラのローブを来てエレノア達を助けたもんだから、あいつはサラをその恩人だと勘違いしているわけか。俺があの時サラからローブを引っぺがしたのがこういう展開を生むとは、この俺も予想だにしていなかった。


「マスター、どういたします?」


「どうしたらいいんだろな。何も思いつかねぇ」


 とはいえ、このままサラを放っておくのも忍びない。俺の可愛い従者を迎えに行かなくてはならないからな。


 うーむ。


 あ、そうだ。


「妙案があるぞ」


「はい」


「アイリス。お前が俺だったことにしてエレノアと話をつけろ」


「と、仰いますと?」


「スライムだった時のお前からエレノア達を助けたのは、お前だったことにするんだよ」


 なんか自分で言っててワケが分からなくなってきたが、幸いにしてアイリスは理解してくれたようだ。


「委細承知です。では行って参りますね」


「ぐっどらっく」


 アイリスはゆったりと歩きながら、言い争いに発展しそうなサラとエレノアに向かっていった。


 一体どうなることやら。ヒヤヒヤもんだな。

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