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動き出す物語

「っつーことは、次にマッサ・ニャラブとの間で戦いが起こったら……」


「……サラちゃんの国が、戦場になるね」


「ちくしょうが」


 そんなリスクを抱えてまでどうして建国しちまったのか。

 そういう風に脅されたのか。

 甘い言葉に惑わされたのか。

 まぁ、亜人は自分達の国を喉から手が出るほど欲していただろうから、無理もないか。

 とにかく、今のところアデライト先生とサラの居場所はわかった。その二人から優先して会いに行くとしよう。


「ところでルーチェ。学園がこの街にあるってんなら、ヒーモのやつもここにいるのか?」


「いるよ。あの人は軍に参加してないし」


「なら、アカネも一緒か?」


「アカネ様? どうだろう……そういえば、最近お姿を見てないような」


 二年間、あっちの世界で俺と一緒にいたからな。


「ちょっと前に戻ってきたとか、聞いてないか?」


「ううん。学園には行かないし、もうダーメンズ家とも関わりがないから」


「そうか」


 ヒーモに会いに行くしかないってことか。

 となれば、次の目的地は。


「学園だな」


 アイリスの記憶を取り戻すのも捨てがたいが、ひとまず皆がどんな状態かを確認しておきたい気持ちもある。

 俺は熱い紅茶を一気に飲み干し、立ち上がる。


「もう行くの?」


「ああ」


「もうちょっとゆっくりしていったらいいのに」


「なに。帰ってくる場所はここさ」


 俺が超絶イケメンスマイルで言うと、ルーチェはにこりと微笑んだ。


「それもそうだね」


 そういうわけで、学園に急ごうと思う。


「ロロ」


「なんだ?」


「フォルティスをこの屋敷に連れてきてくれ」


「がってんしょーち!」


 ロロが部屋を飛び出していく。


「なんだか、二年前のサラちゃんみたいだね」


「そうか? 似ても似つかないだろ」


「えー? そっくりだと思うけど」


 そうかなぁ? サラはもっとおしとやかだったような。いや気のせいかも。


「ロロと、連れてくる馬のことをよろしく頼むぞ。夜までには帰ってくる」


「うん。ご飯、つくっておくね」


「楽しみだ」


 立てかけていた剣を腰に差し、屋敷を後にする。


「いってらっしゃい」


「いってきます」


 手を振り合って出発する。

 ルーチェがうちのメイド長だった期間はごくわずかだったからな。

 こういう何気ないやり取りも至上の喜びに等しい。


 さて、魔法学園に行くか。

 場所知らないけど、その辺の人に聞けばいいだろ。

 アデライト先生に会うのが楽しみでもあり、怖くもある。

 アイリスと同じように、先生も俺のことを忘れているようだから。


 まあいいさ。

 悲観することはない。

 記憶を取り戻す前例はあったんだから。

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