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この物語の主人公さ

 そんなわけでエレノア邸にやってきた。


「なんか。あれだな、メイドがいるお屋敷って聞いてたから、もっとでっけぇのを想像してたぜ」


 ロロが失礼な感想を口にする。

 確かに豪邸という感じではない。

 俺達の目の前に建つのは、街の片隅にある二階建ての一軒家だ。

 現代日本的な感覚で、ごく一般的な一戸建てって感じ。大きめのテラスがあったりして、十分いい家だと思うけどな。


「お嬢様は清貧なお方なのですわ。出費は最低限に抑え、余ったお金は孤児院に寄付されているのです」


「へぇ。いい奴なんだなーそのエレノアって人」


 エレノアらしいといえばらしい、のか?

 まぁ、優しい女だったのは確かだ。

 しかし孤児院に寄付するなんて。二年経って、あいつも更に大人になっているということか。


「どうぞ。中へ」


 アイリスの案内で屋敷の中へ入る。

 玄関に入ると、奥の方からとたとたと足音が近づいてくる。


「やっと帰ってきた? もー、待ちわびたよー」


 ルーチェの声だ。間違いない。


「よかったー。もうお金なくなりそうだったんだよ――って……」


 現れたルーチェは、俺を見るなりぱちぱちと目をしばたたかせた。


「うそ……ロートスくん……?」


 ビンゴ。

 予想通り、ルーチェは俺のことを覚えていた。

 よかった。

 マジでよかった。


「久しぶり。二年ぶりだな、ルーチェ」


 俺は、かなりのイケメンスマイルを浮かべてそう言った。

 ルーチェはぎゅっと唇を引き結び、メイド服のスカートを握り締める。

 十五歳になったルーチェは、俺の知る彼女より大人びて見えた。

 短かった黒髪は、セミロングにまで伸びていて、ノースリーブの上衣を押し上げるおっぱいは豊かといっていいくらいに膨らんでいた。


「遅いよ……もう……」


 黒い瞳に、じわりと涙が滲む。

 それでもにこりと微笑んで、恭しく一礼する。


「おかえりなさいませ。旦那様」


 アイリスが、俺とルーチェを交互に見て、頭にハテナを浮かべる。

 ロロもまったく同じ反応だった。

 二人は顔を見合わせ、お互い首を傾げる。


「メイド長。この方とお知合いなのですか?」


「それに、旦那さまってどういうことなんだ? ここってエレノアって人の家だろ?」


 そうだな。

 それが普通の反応だ。

 だが、俺とルーチェの間でだけ、おかえりなさいで成立するんだ。

 俺が世界に帰還し、ルーチェの住む家にやってきたのだから。


「アイリス。二人を客間にご案内して差し上げて。私はお茶を」


「かしこまりましたわ」


 ふう。

 繋がった。

 途絶えたと思っていた俺の物語が、ここでやっと元の軌道に戻ってきた。

 そんな感じがする。


 アイリスを見つけ、ルーチェを探し出せたことは、僥倖といえる。

 あるいは、これが運命なのか。

 行動が未来を決める。行動は、まことの想いから生じるものだ。

 決して諦めないという強い意志が、この展開をもたらした。


 つくづく思う。

 俺ってマジで主人公やな、と。

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