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野次馬の数が半端ない

 翌朝。

 俺はドボールの中心に位置する闘技場を訪れた。

 巨大な円形の建物はまさにローマのコロッセオを彷彿とさせる。

 周囲には異常なほどに多い観客達が長蛇の列を作り開場を待っている。いったい何人いるんだろう。確実に一万人は越えているか。


「えらく本格的だな」


 思わず本音が漏れるくらいには、圧倒されていた。


「ふん。逃げずに来たみたいだね。坊や」


 闘技場の門をくぐり、奴隷商のおばさんがこちらにやってくる。

 その瞬間、開場待ちの行列がざわついた。


「あ、あれは……マリリン・マーリンだ……!」


「えっ。マリリン・マーリンって、あの『怪力無双』の?」


「そうだよ! 前回優勝者の『豪傑』のマリリンだ!」


「まさかここでチャンピオンを見られるなんてな! 運がいいぜ」


 なんと。

 このおばさん、前回の優勝者だったのか。

 見た感じ普通のおばさんだけど、やっぱりスキルがすごいのかな。


「ふん。外野が騒がしいねぇ」


「よく言うよ。まんざらでもないくせに」


「うちの店の宣伝になるからね。願ったり叶ったりさ」


 したたかだな。それでこそ商人だよ。


「あんたのエントリーは済ませておいたよ。本当は事前登録が必要なんだけどね。あたしの権限でねじ込んでおいた」


「そんなに俺と戦いたいのかよ」


「ハンッ。あたしに喧嘩を売ったことを後悔させてやるって言ってんのさ」


 呆れるぜ、まったく。

 マリリンおばさんと話しているせいか、周囲の注目は俺にも集まっている。

 あんまり目立ちたくないんだけどなぁ。なんとなく。


「あいつ、見ない顔だな」


「チャンピオンと知り合いか?」


「それにしては険悪なムードじゃない? たぶん、身の程も知らずにチャンピオンに挑んだ愚かな男だと思うわ」


「ああそうだ。そうに違いない。それで、この観衆の中、制裁を加えられるってわけだ。なんと素晴らしいショーなんだ」


「流石はチャンピオン。観客を楽しませることも忘れていない。良い趣味してるぜ」


 好き勝手言われているが、どうでもいいか。

 正直、今の俺がどこまでやれるのかってのは気になるところだしな。

 稼ぎがてら、腕試しといこうじゃないの。


 そんなこんなで、大会が始まった。

 大会はトーナメント式だった。参加者は六十四人。二つのブロックに分かれている。両ブロックを勝ち抜いた二人が、決勝でぶつかるって感じだな。


 俺はAブロック。マリリンおばさんはBブロックだった。

 たぶんこれも根回しされたんだろう。決勝で俺を倒して、屈辱を味あわせたいという魂胆が透けて見える。

 俺が敗退したらしたで、馬鹿にできるしな。


 まぁ、負けることはないだろう。

 とりあえずは、頑張ってみるさ。

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