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お前も家族だ

「君は……?」


 思わず尋ねてしまう。


 正直、この少女がスライムであることは予想していたが、あまりの衝撃に心が受け入れてくれなかった。


「わたくしはわたくしです。マスターの忠実なるしもべ」


 白い肌はどう見てもスライムじゃない。人間、いや女神にも見紛う。

 空色の髪は滑らかで、もとが液体だったなんて信じられないくらいだ。


「スライム……なんだろ?」


「はい」


「どうしてそんな姿に」


 スライムは不定形だから、どんな形にでもなれるだろう。けど、これはまるで変身だ。

 普通じゃないことは何の知識もない俺にもわかる。


「さきほどマスターがお話しされていた女性から、スキルを拝借いたしました」


 少女はいたずらっぽい笑いを漏らす。


 俺は柔らかく大きなおっぱいを目の前にして、下半身は熱く、しかし頭は冷静に回転させる。


「アデライト先生のことか? あの人のスキルを?」


「ええ。あの方は自身の肉体を変化させるスキルをお持ちでした。マスターのおかげで『ノーハングリー』は不要になりましたから、少しでもマスターに喜んでもらえるように人の姿を取ってみたのです」


「そりゃあ……」


 グッジョブとしか言いようがない。


「捨てられたくありませんでしたから」


 少し不安そうに彼女は呟く。

 空色の瞳にじっと見つめられ、俺の心臓は割鐘のように鳴り響いていた。


 大体、十五、六歳くらいだろうか。人の姿になったスライムの肉体年齢はそれくらいに見えた。

 今の俺からすれば、すこしだけお姉さんだ。


「捨てねぇよ」


 俺は彼女を抱きしめ返す。

 その肌触りは、やはりスライムではなく、きめ細やかな人間の肌のそれだった。


「お前は俺の、二人目の従者だ」


「マスター」


 俺達は強く抱きしめ合う。


 スライムから美少女になった途端この対応では、現金な男だと思われるかもしれない。

 けど、本質は見た目じゃないんだ。


 こうやって心から俺を心配し、慰めてくれる。その為に姿まで変えてくれた。その真心に感動したのだ。


「マスター。わたくしを、サラちゃんと同じようにマスターの家族にしてください」


「家族だって?」


 それに、俺とサラが家族? 主従ではあるが、別に結婚したわけもないのに。

 スライムは微笑んで、その白い指で俺の頬を撫でる。


「家族のあり方は千差万別です。時代や場所によって変わりもします。けれどただ一つ、家族を家族たらしめる不変の力があるのです」


「それって?」


「愛です」


 俺の耳元でそっと囁くスライム。


「その想いに支えられて、人は強くも優しくもなれるんです」


 確かに、彼女の言うことは正しいかもしれない。


 俺はサラを、女性としてはかどうかはわからないが愛している。サラも同じだろう。そして今俺がスライムから向けられている感情も、もしかしたらある意味で愛なのかもしれない。

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