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光明

 そんなわけで約百人のエルフ達と情事を行った。

 まさか、戻ってきた直後にこんなことになるなんて夢にも思っていなかったが、エルフという種の存続の為に俺も一皮剥いたというわけだ。


「ご苦労だったでやんす、ロートス」


 椅子に腰掛けるオーサはほくほく顔だった。やはり族長として種の繁栄が保証されたことは嬉しいのだろう。


「ほんとにな。けっこう大変だったぞ」


「一部始終を覗いていたでやんすが……実に尊かったでやんすな。男を知らない者も多かったから、そういう子らの反応には年甲斐もなく心がときめいたでやんすよ」


 なんだそりゃ。

 たしかに俺は様々なタイプのエルフと行為に及んだ。スレンダーからグラマラス。大人っぽい感じや、幼い感じ。初心な恥ずかしがり屋もいたし、テクニシャンな肉食系もいた。エルフってのは皆もれなく美人だから、俺も張り切ってしまった感はある。


「本当に感謝しかないでやんすよ。出生に関しては、エルフにとって深刻な問題だったやんす。このままエルフという種がこの世から絶滅してしまう可能性だって、あるのでやんすよ」


 やったことはただの子作りだが、ある意味で救世主なのかもしれないな俺は。


「そうそう。俺ってあれなんじゃないか? 清きなんとかってやつ?」


 オーサの顔つきが変わる。


「知っているでやんすか。『清き異国の雄』を」


「ああ。まぁ……あれ? 知ってちゃまずかったんだっけ?」


「人間が知っているなんて珍しいと思っただけでやんすよ。エルフについて詳しい者なら、他の種族でもそれを知っていてもおかしくはないでやんす。ん~」


 オーサはなにやら考え込んでいるようだ。


「もしかしてロートスは、前にもここに来たことがあるでやんすか?」


「え?」


「人間の男が来るのは、フィードリットの夫になった男以来でやんす。それ以外に覚えはない。でも、ロートスがここにいるのは、初めてではないような気がするでやんすよ」


 脳天に衝撃が入った。

 まじか。忘れてはいるものの、完全に忘れ去られてはいないってことなのか。


「オーサ。ちょっと聞いてもいいか?」


「なんでやんす?」


「二年くらい前にさ、この里が襲われたことがあっただろ。人間の集団に」


「あったでやんす。ついこの間の話でやんすね」


「その直前くらいに、人間を捕まえなかったか?」


「捕まえたでやんす。エレノアのことでやんすね」


「そうそう」


 なんか嬉しくなってきた。エレノアの名前を聞けただけなのに。


「それって、もう一人いなかったか?」


「もう一人?」


「ああ。エレノアと同い年くらいの少年だ」


 オーサは首を捻る。


「いなかったと思うでやんすが……あの後フィードリットと奴の娘達が来て……ん~? そうでやんす。『清き異国の雄』の話を……嫌な感じでやんすな。そのあたりの記憶が曖昧でやんす。まだそんな歳でもないのでやんすけど」


 なるほどな。

 実際に俺が存在していたのを、無理矢理いなかったことにすりゃ、そりゃ矛盾が生まれるわな。


 なるほど。

 なんとなく、光明は見えてきた。

 もしかしたら、皆が俺のことを思い出してくれるかもしれないってことだな。

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