パズルの完成は近い
「もちろん、そんなノームの悪行を古代人が許すはずもありません。彼らは平和を愛してたというより、自分達が世界の支配者、あるいは管理者であるとの誇りを持っていたからです。後から生まれた種族であるノームに好き勝手されるのが我慢ならなかったのです」
「ふーむ」
「古代人は、みなそれぞれの異能を持っていました。ある者は自由に空を飛び、ある者は雷を操り、ある者は現世と黄泉とを行き来したと言われています」
「権能か」
「はい。古代人はその力を使い、ノームの粛清に乗り出しました」
アンの声色が変わる。
「しかし、ここで誤算が生じたのです。法理の女神ファルトゥールが、ノーム側についた」
うっそだろ。なにやってんだよ。
「女神の加護を得たノームは、古代人の力を遥かにしのぐ強さを手に入れ、その勢力をみるみるうちに拡大していきました。他種族を抑え、優秀なはずの古代人までもが劣勢に追い込まれたのです」
「ノームってすごいんだな。それともファルトゥールがすごいのか?」
「どちらもすごかったのです。ファルトゥールは世界の理を司る女神。ノームに与えた知恵により、彼らは自らに秘められし力を自覚したのです。そのおかげで、彼らは古代人の権能にも負けない強さを手に入れた」
「秘められし力?」
「そうです。定められた運命を変革する力。未来を切り開く確固たる意志の力です」
おいおい。まじか。
「それってまさか」
「ロートス様ならもうお気づきでしょう。ノームとは、現代において人間と呼ばれる種族。新人類のことを指すのです」
なんてこった。
俺達はノームだったのか。
まぁ、話の辻褄は合うか。色々なところで聞いたこの世界の真実。バラバラだった無数のピースがはまっていく。
アンは続きを語る。
「追い詰められた古代人は、万象の女神マーテリアに助けを求めました。争いを嘆いたマーテリアは、ある一つの方法を古代人に啓示してしまった。それが、新たな神の創造です」
「エストだな」
首肯するアン。
「三女神の上に立つ新たな神、いわゆる最高神を創造することで、ファルトゥールの力を抑えようとしたのです。しかし、いくら異能を持つ古代人でも無から神という存在を創り出すことなど不可能です」
「そりゃそうだ」
「ですから、新たな神の核として、マーテリアが用いたのです」
「女神を?」
「自身を元に、新たな神を創り出せと、マーテリアがそう告げたのです」
自分を犠牲にするなんて。
「そして古代人は、エストを創造した。そして、運命を補強する力でノームの持つ特性を封じ込め、ついにはファルトゥールまでもを封印したのです」
なるほどな。
「大体の話はわかった。けど一つ気になることが」
「なんなりと」
「エンディオーネは、その間何をしていた? どう動いたんだ?」
アンは頷き、俺の質問に答えてくれた。




