ぜんぶ無駄だった
「おいあいつ。メダルを取ってきたらしいぞ」
「すげーな。なんて奴だよ……!」
「ぱっと見冴えない感じなのに、実力者っていうのは外見からはわからないものなのね」
「従者の方が良い物着てるし、あのロートスって男も変わり種のようね」
「なんにしろ、数少ないメダル入手勢だ。今から仲良くなっていた方がよさそうだな」
周囲から色々な言葉が聞こえてくる。
目立ってるぞ。ふざけんな。
「ご主人様。これって」
「ああ。どうやら俺は、とんでもない下手を打っちまったらしい」
後悔先に立たず。俺は脂汗をかきながら、アデライト先生の言葉を待った。
「おめでとうございますロートスさん。時間ギリギリですけど、メダルを取ってこれたことは称賛に値します。すごいですよ」
先生はにっこりと笑み、俺の頭を撫でた。
なんという恥ずかしいことをされているんだ俺は。だが巨乳だから許すしかないっていうのがひどくジレンマだ。
「先生。これはつまり……どういうことですか?」
首を傾げるアデライト先生。
「メダルを取ってくるのが試験なんじゃなかったんですか? それなのに、どうしてこんなに周りに驚かれるのか……」
「ああ、そういうことですか」
得心したように頷いて、先生は眼鏡をくいっと上げた。
納得できる説明を頼むぜ。
「確かに私は言いましたね。メダルを取ってくるようにと。ですが実際に全員が取ってこれるなんて想定していません。あくまでそれは試験の目標であって、絶対条件ではありませんから」
「なん……だと……」
「時間制限があるのもそのためです。事実、時間内にメダルを取ってこれた新入生は全体の一割ほど。およそ五十人ほどですね」
じゃあなにか。エレノアやイキール。ヒーモやあの時のパーティメンバー達、それに洞窟の前でメダルを手にしていたやつらはごく一部のメダル入手者だったってことか? うそだろ?
「メダルを取ってこれるということは、それだけ優秀ってことなんですよ。少なくとも、上位五十人には確実に入っているでしょうね」
「ああ……そうですか」
やっちまったな。このロートス最大の失態だ。
「ええ。それでは、このメダルは回収しますね。クラス発表は明日ですから、それまではゆっくり休んでください。今日はもうおしまいです」
俺はがっくりと肩を落として、その場を去った。
せっかく頑張ったのに、結果はこのザマだ。すべてが空回り。裏目に出てしまった。
「あの……ご主人様」
俯いて学内を歩く俺に、サラがおずおずと声をかけてくる。
「元気出してください。まだ上位クラスに決まったわけじゃ……」
「気休めはよしてくれ。まず間違いなくマスタークラス。下手すりゃスペリオルクラスだろうよ。こんな『無職』がだぜ? はは、笑えるよな……?」
我ながら卑屈なセリフだ。
サラも悲しそうな顔で俺を見つめている。
こんな顔をさせたいわけじゃないのに。




