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神の山に来たぜ徒歩で

 エトワールを出て、神の山に向かう。


「神の山には、人が住んでたって言っていましたね。あの人」


 道中で、オルタンシアがそんなことを口にした。


「ああ」


「神様って、人なんですか?」


「神にも色々あるからな。創世神だの最高神だの神族だの」


「えっと……何が違うのか、自分にはよくわかりません。神様って、最高神エストだけじゃないのですか?」


「大体の人にとっちゃそうだな。だけど、実際は時代と一緒に神も移り変わってきたらしいぜ。サニーが言っていた神の山に住んでた人ってのは、古代人のことだと思う。まぁ、自称神の人間ってところだな」


「自称ですか……」


「そう。まぁ神ってほとんど自称な気がするけどな」


 俺が神でーす。とか、中二病も甚だしいな。


「まぁ、神の山に古代人の遺跡とかがあるなら、ちょっと興味がある」


 この世界の真実とやらを、また一つ知ることができるかもしれないしな。

 それはともかく。


「疲れてないか? オルたそ」


「はい。平気です」


「ほんとか? このところ旅続きだろ? 無理するなよ」


「ありがとうございます。でも……自分もジェルド族の一人として、訓練を受けてきましたから、本当に平気です」


 小さく笑うオルタンシア。

 ふむ。いらない心配だったか。

 俺のような軟弱なシティボーイとは違うんだな。


 そんなこんなで平野を歩き、神の山へと近づいていく。

 この辺りになると人影なんてまったくない。広い草原が広がっているだけだ。

 神の山からやってくるモンスターもいない。あそこに発生源があるという話だけど、やっぱり嘘なのか? 疑わしいな。


「種馬さま……あれ」


 山が近づいてくると、オルタンシアが何かに気付いたようだ。彼女が指さした先は山のふもと。

 山道の入口に、建物がある。


「あれが遺跡……ってわけじゃなさそうだな」


 比較的新しく建てられた感じだ。おそらく、国が山を管理するため建てたんだろう。

 そして、その建物の前には、一人の若い女性が立っていた。


「人が、いますね」


「ああ」


 どうやら俺達を待っているようだ。腰の前で両手を組み、俺達をじっと見据えている。

 その女性の前まで行くと、彼女は恭しくお辞儀をした。


「お待ちしておりました。ロートス・アルバレス様」


 長い黒髪を一つくくりにした色白の女性だ。どことなく日本人的な雰囲気を感じる。

 おっぱいは小さい。長身でスレンダーな美人という表現が似合う。

 そうだな。守備範囲内の女性を見たらまずはおっぱいを確認するのが礼儀ってもんだろう。逆に確認しないと失礼にあたると思うわ。


「あんたは?」


「あーしは、アンと申します。ロートス様のことは、母ルクレツィアから伺っております」


「ギルド長の娘さんか」


 似ても似つかないな。背が高いところはちょっと似てるけど。


「はい。あーしは国王陛下の命を受け、この山の守り人をしております」


「最近はモンスターがいっぱい出るんだろ? 危険じゃないのか?」


「神が守って下さいますゆえ、この身に危険はございません。信仰の賜物です」


「そっか」


 エストへの信仰か?

 人が創り出した神に利益なんかあんのかね。

 スキルが利益というなら、そうなんだろうけど。


「モンスターの発生源がこの山にあるんだろ? A級冒険者達が行方不明だとも聞いた」


「はい。ここから入山できます。中腹まではあーしがご案内差し上げます」


「発生源はどこにある?」


「おそらく頂上かと」


「まじか」


 こんな高い山を登るとなると、かなりの重労働だな。今の俺ならまぁ楽勝か。気持ちの問題だな。


「わかった。さっそく行こう。時間が惜しい」


「かしこまりました。では」


 アンはくるりと背を向け、山道へと入っていく。

 俺はオルタンシアの手を握り、その後を追うこととなった。

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