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「あ? なんだこりゃ」
洞窟を出た時、空はかなり薄暗かった。
入った時は昼過ぎだったはずだ。そんなに時間が経ってたってのか?
「もう夜……ですか? おかしいですね。このダンジョンだけでそんなにかかりましたっけ?」
サラも困惑している。俺もそうだ。
「あのコウモリどもの幻術で時間感覚もおかしくなったとか?」
「そういうのもありえますけど……それにしてもなんかおかしいっていうか、違和感っていうか……」
サラは空を見上げる。
「夜……? え、違いますよこれ! 夜じゃなくて朝です!」
「はぁ?」
こんな暗いのに朝だと。
「待て。とういうことは――」
「もうすぐ夜明けですよご主人様!」
なんてこった。
洞窟の中で一夜を明かしてしまったらしい。体感時間は短かったが、それは幻術のせいで、実際は長い時間が経っていたということだ。そういえば、なんとなく眠くなってきた節がある。
いや、そんなことよりも。
「試験の期限は次の日の朝までだったよな。まずいぞ。早く戻らねぇと……!」
「目立っちゃう、ってことですよね?」
「そうだ。話がわかってきたなサラ! 行くぞ!」
このまま期限に間に合わなかったり、ギリギリでメダルを提出なんかした日には、確実に目立つ。それだけはイヤなんだよな。
俺とサラは眠気をおして走る。
そして、アデライト先生が待つ学園講堂前に到着した。
すでに多くの新入生が集まっており、周囲はざわついていた。
「間に合ったな……!」
「ご主人様、早くメダルを提出してしまいましょう」
「ああ……!」
俺はアデライト先生の前にできた列の最後尾に並んだ。
よし、うまくその他大勢の中に紛れ込めたぞ。このまま洞窟のメダルを提出すれば、ちょうどいいレベルのクラスに配属されるはずだ。
「やりましたねご主人様」
「苦労した甲斐があったってもんだな」
「今夜はご馳走ですか?」
「そうだな。昨日の晩飯は、結局食べてないことになんだもんな」
「じゃあご馳走はランチですね」
「お前な。また『てぇてぇ亭』のスペシャルランチ頼むつもりだろ」
「えへへ。わかりますか?」
「まったく……まぁいいけどな。お前が喜んでくれるなら、それくらいは奮発するさ」
「さすがボクの愛するご主人さまですっ」
「よせやい」
そんなことを話しているうちに、いつの間にか俺の番がやってきた。
「おかえりなさい。お名前をどうぞ」
先生がにこやかに言う。俺は先生の豊満なおっぱいの谷間を凝視しつつ、かっこいい声で答えた。
「ロートス・アルバレスです」
「メダルは手に入りましたか?」
「はい。これを」
俺は懐からメダルを取り出し、先生に手渡した。
「放浪の洞窟でとってきました」
その瞬間、周囲が騒然となる。
待て。これは一体どうしたことだ。
周囲の注目が、俺に集まっていた。




